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「恐慌前夜」副島 隆彦 (著) ー読書日記
*焦げついた住宅公社債《530兆円》その内訳
P−34
ことの始まりは、7月に入って米大手証券のリーマン・ブラザーズが「GSE社)は、会計基準が厳格化されれば
750憶ドル(8兆円)の増資が必要だ」と記したレポートを発表したからだ。このリーマン自身の破綻の日も近い。
人(他人)のことを分析している暇はない。 7月10日にウィリアム・プール前セントルイス連銀総裁が、
「GSEはすでに実質超過(破綻している)である。政府による救済がどうしても必要となる」と発言した
そのため・ファニーメイとフレディマックの株価は11日に、一気に一時10ドルを下回るまでに急落し
た(フレディが3ドル、ファニーが6ドル、そして破綻が本当に危惧される状況に陥った。
6ドルというのは日本の株式で言えば「額面50円割れ」に等しい。この株価が今後大きく回復することはない。
二大住宅公社は、すでに死に体である。つい最近まで株価が100ドルを超していたアメリカの
「政府系金融機関の超優良会社」だったのに。 みんなの血の気が引いた。その次の日の7月13日に、
ヘンリー,ポールソン財務長官の開き直りにしか見えない突然の記者会見があった。
ここで、両社の5.2兆ドル(530兆円)もの巨額の不良な融資残高と債券発行残高の合計金額が公表され、
これらのすべてが信用毀損していることが判明した。これらの公社債券の担保となっているのは、
公社が買い取ってさらに別の証券に組み立て直した住宅ローン債権である。
そのほとんどが大きく不良債権(バッド・ローン)化している。
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*シティー、メリルリンチ、さらにモルガンも消える
P−178
アメリカでこれか30社ぐらいの大銀行、大証券会社、生命保険会社、侵害保険会社が潰れるだろう。
ヨーロッパでも20社ぐらいが今からまだまだ潰れていくだろう。
もつとはっきり書こう。巨大銀行のシティグループ(シティバンク)はあと3年で潰れる。
証券会社最大手のメリルリンチも、りーマン・ブラザーズもモルガン.スタンレーも来年、
再来年までには消えてなくなる。 生き残るのはゴールドマン、.サックスとJPモルガン・チェースと
ウェルズ・ファーゴ銀行などであろう。バンク・オブ・アメリカはかろうじて生き残るだろう。
クレジット・カード大手で言えば、VISAとアメックス、ダイナース、マスターカードの大手4社は生き残るだろうが、
それ以外は危ないものである。
メリルリンチとモルガン・スタンレー、リーマン・ブラザーズは自分自身がすでに大きな手負い狼になってしまっている。
各々が保有資金で3兆円、5兆円の含み損(表に出せない損)を抱え込んでいる。その損を一気に取り戻そうとして、
原油市場などで大バクチをやったらしい。商品(コモディティ。貴金属、石油など)の先物市場に資金が流れ込んで、
大きなバクチ相場を張った。メリルリンチとりーマン・ブラザーズがこの大バクチに失敗したようだ。
NYMEXの原油先物市場で、自社が石油トレーダーのふりをした取引までやっていたのだ。
その資格もすでに取り上げられ、いよいよ最後のあがきをしているようだ。
そして、やがてふたたび「連鎖する大暴落」が襲いかかってくる。
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以上だが、これが発刊された当日にリーマンが倒産、その数日後にメリルも実質消滅してしまった。
アメリカ政府が、AIGを実際救済をしてもそれは自国通貨の印刷しかないが、ジャブジャブを続けるようであれば、
米ドルと米国債の価値が大下落する。 ドルは来年は90円、80円になるだろう。
さらにオバマが大統領になれば、オバマショック(米ドル切り下げの第二のニクソンショック)が数年内には起きる。
得体のしれない経済的動乱が起こってしまったのである。恐ろしいことに、これは毎日使っている紙幣の問題である。
僅かな預金だが三分の二を金(キン)に替えて銀行の金庫に預けた。
私の中では、恐慌が既に生じ、日本が一番危ないと判断したからである。
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