閑話小題 ~二日月(山岸凉子スペシャルセレクションⅧ) -2

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            『人生を狂わす名著 50』三宅香帆著
   * 極楽も地獄も知らぬ、腑甲斐ない女
 世の中には、「極楽も地獄も知らぬ不甲斐ない人間」が存在している。
定年退職になって、リスクを賭けることなく平々凡々の自らの人生に、茫然と。
その時に、初めて己が人生の価値(意味)について考えるが、時は既に遅し。
そして老人性の鬱状態に。そこで始めるのが、これまでとってきた態度価値に
従い、異種の生き方の否定。横並びでは、何の価値が無い自分を肯定するため、
それは真剣そのもの。
 南米パタゴニアの果てで、初老の女性が、道すがら話しかけてきた。
その詳細は、最後にコピーしておきますが、それが何とも… 

   ~芥川龍之介『六の宮の姫君』あらすじ~

 六の宮の姫君は父母の寵愛を受けて何不自由なく育ちました。
姫君は昔気質の父母の教え通りに慎ましく振る舞い、とくに嬉しいことも
悲しいこともない代わりに格別不満もない平穏な日々を過ごしていました。

 しかし突然両親が相次いで亡くなり、乳母と姫君だけが残されてしまいます。
乳母は姫君のために骨身を惜まず働き続けましたが、家は次第に落ちぶれて
生活が苦しくなっていきます。しかし姫君はどうすることもできず、昔と少しも
変わらずに寂しい家の中で琴を引いたり歌を詠んだりして日々を過ごしました。

 このままで先行き成り立たないと案じた乳母は、姫君に男と会うように勧めます。
姫君は、それは生活のために身を売るのも同然だと嘆きますが、結局は男と会い
一緒に暮らすことになります。
 男は上品で優しく、姫君を愛してくれました。姫君もそれには悪い気はしません
でしたが、男と一緒にいても一度も嬉しいと思ったことはありませんでした。
ただとりあえず、平穏な日々を過ごすことはできました。

 しかしやがて男は陸奥の守に任ぜられ、五年後には帰ってくると言い残して
姫君の元を去ります。ところが、五年経っても男は帰ってきません。
 男が地方に赴任中に娶った妻と京へ帰ってきたのは、結局九年目の秋でした。
男は姫君を訪ねようとしますが、六の宮はすでに朽ち果てており、残っているのは
荒れ果てた庭跡と築土だけでした。

 男は姫君の行方を探し回り、ある日偶然、朱雀門の近くの荒ら屋で破れたむしろ
をまとった乳母に介抱されている不気味なほど痩せ枯れた姫君を見つけます。
 男は姫君の名前を呼ぶと、姫君は男の顔を見て突如何か叫んだかと思うと
そこに倒れ込んでしまいます。
 乳母は急いで近くにいた乞食法師にお経を読んでくれるように頼みます。
姫君は男に抱えられながら、夢うつつのまま静かに息を引き取りました。

 後日、姫君を看取った乞食法師が朱雀門にいると、侍が近づいてきて、近頃この
あたりで女の泣き声がするそうではないかと問いただします。法師は侍に耳を澄まし
てみるように言うと、やがてたしかに細々と女が嘆いているような声がします。
 あわてて刀に手をかけた侍に法師は言います。

 「あれは極楽も地獄も知らぬ、腑甲斐(ふがひ)ない女の魂でござる。
御仏を念じておやりなされ。」

 ―
▼ 昨日‘極楽も地獄を味わった男’から遺言と思ぼしきCDが送付されてきた!
 何とも味わい深い内容。そこには原爆投下で死んだ弟を背負った少年の写真が…
長男が、当人の連合いである母と、弟を殺して、会社ごと炎上させた事件も吐露
している内容。哀しみは、薄れることなく、むしろ深く色濃く残っているようだ。
<6680,閑話小題 ~悲しみって、時間と共に深くなるのよ!> 
この人の極楽と地獄、極楽はともかく、地獄には敗ける! ~これも後にコピー
私の遺言は、18年と2ヶ月にわたり、書き続けてきた、このブログ。それを遥かに
超えた?濃厚なもの。長岡という岩盤の世界で、斯くなりなん。私は、深い関わり
を避けてきたが、真逆の生き方が、彼。何じゃ御前は!と、迫ってくるような。
 自らをコミック風に表現できるとは、これはこれは! 私には出来ない。

・・・・・・
6288,読書日記 生きることへの冒瀆とは! ~3
2018年06月01日(金)
          『旅人よ どの街で死ぬか。~「男の美眺」』
                   (伊集院静 2017年)から。
   * 予感、あるいは沈溺
≪ ◉ 長く旅を続けるには術が必要である。友人の勝負師とどうように、
 頓着を持たないことだ。旅人の一人の些細な感情など都会という土地では
とるに足りなぬものだ。
そんな時は高台に行き、都会を見おろせばいい。
河岸に立って川を眺めればいい。人の感情など関わりなく、
―川はただ流れている。それだけのことだ。
 ー何かを手に入れたものは何かを失う。自明の理である。
旅を続けている限り、失うものはない。しかし失わないことが旅に求める
安堵であるのなら、その旅は愚かな行為でしかない。流れる水を見て思った。
ともかく旅を続けるしかない。             127-128p
◉ ヨーロッパ大陸を飛行機で旅し、窓から大陸を見たことがある人は、初夏に
 レモンイエローの花を咲かせた菜の花畑の美しさを知っているはずだ。148-149p
◉ ポーランドアウシュビッツ収容所を訪ねた。見ておくべき場所だから
 出かけた。私をむかえてくれた日本人の案内人は物静かで温和な人だった。
収容者たちが列車から降ろされ、歩かされた道を案内人と歩いた。折から
やわらかな初夏の風が吹いて流れ、路傍の野花を揺らしていた。かつてここが
殺戮の場所であったとき、花は咲いてもいなかったろう。収容所で目にした
ものは、予期したとおり私たちが見ておくべきもの、知っていなくてはならない
ものだった。黙示であってはならないものである。残されたものたちが立証して
いるのは、これがまぎれもなく人間がなしたものであるということだ。
~過ちをくり返すのが人間だとしたら、人間はどうしようもない生きものである。
-そうかもしれない…。    207p     ≫
 ―
▼ ツアーの面白さ、厳しさの一つが、1~2週間、移動空間と旅先空間を密着
 すること。 嫌でも、様々な人生を垣間見ることになる。また、重厚な人生観を
知ることになる。行先の多くが秘異郷もあるが… 10年近く前までは、まだまだ、
高度成長時代の恩恵を受けた人たちが多かった。その反面、仕事に追われてフッと
気づくと晩年に差し掛かり、人生を取り戻そうとすがる思いの人が半数だろう。
それが圧倒的大自然の只中で、自然と出てくる激情が、呟きで聞こえてくる。

『ズ~ッと老人ホームで働いてきたの。で、ハッと気づいたら、自分が年寄りに。
現実に流されて、周辺の人だけを見てね。何にも考えないで、決断もしなくて、
これまで生きてきたの。ところが先を切られたの… …旅行前に色いろの問題を
箪笥の中に押しこんでね。帰ったら、それを出して整理をしないと。
でもここに来て良かった。これで心おきなく死ねるわ。』 

パタゴニアの、山中の道すがら、初老の女性が、何気なく話しかけてきた言葉。
話は続く。
『養老院って、人生の果てでしょ。人間の本性が丸出しになるの。特にね、
夜這いって、御婆さんの方が多いの。夜中に男の人の悲鳴が聞こえてくるの。
‘何するんだ、この野郎’ってね。 寂しかったのね。』

――――

6680,閑話小題 ~悲しみって、時間と共に深くなるのよ!
2019年06月30日(日)
  * 悲しみは時間と共に薄れるって嘘よ
 再び「ガイロク(街録)という番組の話。 下町で一人歩く御婆さんの話題。
《 若くして夫を失い、その後、手塩にかけた一人息子を交通事故を亡くしたと
いう、『毎月、祥月命日に、墓地にお参りに行くのが、務め。これは私が元気
でないのなら…。 高尾山のお墓に行くため山を登るときに、自分の名前を呼びながら
励まして登るの。>と、述べていた。 
 ところが、それを聞いていたゲスト榊原郁恵の母親の言葉が何とも! 
『郁恵ちゃん、悲しみって時間と共に薄くなるって、嘘よ。逆よ!』
いや、驚いた。悲しみ、苦しみは、私の経験則からして大よそ、二年半で
治まってきた。一般的にも、慰めで『二年も経てば、乗越えられますよ!』と…
時間薬の効果である。しかし、それは、その程度の悲しみに過ぎないと…直感した。 
 直に思いついたのが、二人の息子を頃に亡くした両親の悲しみ。
特に母親の心の傷。乗越えたとしても、年々、悲しみは深まっていた? 
そうこう考えると‘絶叫したくなる’ほど 両親に対する思いが一変することに。
長男、次男の不幸な死を招いた罪の意識と、反省。 私が、20歳になった頃に、
二人の分も、『自由に、明るく羽ばたいてみろ!』と、応援していてくれたことは
薄々知っていた。昭和40年代は、右上がり経済の真只中。坂の上の雲は青く輝いて
いた。私の過ごして学生寮の名が『青雲寮』。あの時代の抑揚感は当時の歌謡曲に、
そのまま現われていた。しかし、太平洋戦争の深い犠牲の上で、それがあった。
『悲しみは、時間と共に深まっていく』の言葉に、『エッ!』と、この年齢で
驚くのは、私自身が晩期の両親の年代に入ったため。そして私の悲しみが浅いか!

  この街頭録音略して「街録」。ネットによると、
<街ゆく人々の“リアル”な声から、人生を学ぶ! 人生のピンチやハプニング
とどう向き合い、乗り越えてきたのか? その経験から得たものとは…。
山あり谷ありの内容> とある。 これに似ているのが、『地球タクシー』
『家についていっていいですか』『空港ピアノ』などがある。何気ない通りすがり
の人生を、僅かな因縁の機会に垣間見る味わい。
 この『ガイロク』でも、『家についていっていいですか』でも、
『あなたの人生を自ら何点付けますか?』と、急に、声をかけられたとしたら… 
さて如何こたえられるか? それも、全国津々浦々に晒された中で? 
顔ぼかしなら、何とか!理路整然と… 『日々是口実』をしてきたこともあり…  
 何をしに、何をして、生きてきた?
 親鸞ですか? 
歎異抄 ... 弥陀の誓願不思議に助けられまいらせて往生をば遂ぐるなりと
 信じて「念仏申さん」と思いたつ心のおこるとき … > 。
 
 ・・・・・・
5958,洗って使える 泥名言 ~3 ーライオンは弱い奴を狩りに行く
2017年07月08日(土)    
            <『洗えば使える 泥名言』西原理恵子 (著) >
   * ライオンは弱い奴を狩に行く
  ~ 他の章の面白い泥名言が… ~
<すべての男は3等賞や。それを一等にするも、三等にするのも自分や。> 
 と、知り合いのママが言っていたというが… 凄いことをいう。更に、
<三等を三等のままにしておくのも立派なことで「それで充分やんか」>
 だと。それもこれも、泡沫の夢幻の話。死んでしまえば皆、同じ。

<ライオンは弱い奴を狩りに行く。>
 暴力と貧困は、高いところから低いところに行く。世間とかいうゴミダメは、
 こういう弱者探しを生業に成立ち、日常会話で「にわか裁判」をしている。
 まず検事がいて、裁判長、そして傍聴人までいる。多くが、人生不燃焼組で、
 その燃え残りに火をつげ、自己満足する輩。対象は「大変な人」。

<よく離婚とか、彼女と別れる段になって、きれいに別れようとするバカが
 いるじゃないですか。あれ、一番ダメなんですよ。何やっても嫌われるの
 なら、「どうして、こんな奴と」思われるぐらい嫌われた方がいい。>
 キレイに事業撤退とか転職をしようとするから、ダメ。嫌われ罵声を浴び、
「これも有りか」と、独り打ち震えるのを逆に楽しむ位でないと。 
「最期は、キレイに撤退したい〉の私の要請に対する弁護士の答え
〈借金を踏み倒すのに、キレイも汚いもない。70点が最高点と思って下さい!
〈それでは、70点に近づけるように、お願いします。〉と方針決定。
 甘かったかもしれないが、過去の経験からして、やはり、後味の悪いのは、
 傷口に悪い。

▼ 大変な家庭環境の中で、下ネタ経験充分の人生もあり、とう泥名言の数々。
 緑の原野(娑婆)には、花も実もあるが、捕食動物も、被捕食動物もいる。
狩るか、狩られるかの弱肉強食のドラマが日ごと繰り返されている。ところで、
『今、何になっているの?』『何を狩ってんの?』『何を楽しんでるの?』
『人間をしているの!』『好きな遊びを探してるの』『趣味を楽しんでるの』…
… など、様ざま。問題は、時間が限られていること。キーワードは、『よく』
が、それぞれの生きざまの頭についているかどうか。その為には考えることだ。