「もはや成長という幻想を捨てよう」ー佐伯啓思  中央公論 08年12月号
   が、なかなか説得力のある内容であった。 
  ーまずは、そのいくつかを抜粋してみる。                    
「今回の経済危機の原因は長期的に見ると、20世紀を通じて続けてきたアメリカ型資本主義による
経済発展の行き詰まりである。 資本主義の本質は、物的生産力を無限に拡張していくことにある。
だが先進国では70〜80年代に社会が成熟段階に達してしまい、人々がさほどモノを欲しがらなくなった。
その結果、製造業に投資しても大きな利潤が出ないので、余ったカネを金融市場に集めてバブルを常に起こすことで、
経済発展をしてきた」
  ーー
「人々が高いお金を払ってまでも手に入れたいと思う『モノ』がもはや亡くなりつつある、ということであろう。
だからそ、製造業は、過酷なまでの価格競争によって、価格を下げるほか無いのである。・・・
今日、『経済活動の過剰』という問題に真っ正面から取り組むべきではなかろうか。
確かに、今日、資源はますます希少となり、食糧も希少化しつつある。食糧の奪い合いが始まろうとしているし、
アメリカ人は借金をしてまで貪欲にモノを買い続けている。人間の欲望は無限であり、モノは有限である。」
  ーー
グローバル化の第2の波である帝国主義の真相を、英国の経済学者でえあるボブソンは恒久的な消費の低下にあると見ていた。
・・・ ケインズこそ、現代資本主義の最大の問題を消費の低迷に見ていたのである。 かくも豊かな社会が到来すれば、
人々はもはやその関心を『モノ』には向けなくなるであろう。その結果、消費は低迷し、それが資本主義の長期的停滞を
もたらすだろう、というのがケインズの予想であった。『豊かさの中の停滞』である。
豊かさのまっただ中でこそ、資本主義は深刻な問題を生み出す、というのである。」
  ーー
「『貧困への恐怖』と『豊さへの渇望』がもはや経済活力の源とならない。・・・もしそうだとすれば、規制緩和
市場競争促進政策は、いっそうの生産能力過剰をもたらすだけのことであり、それに伴う有効な需要の伸長がないとすれば、
よほど無理なコスト競争、価格競争をしなければ企業は存続できないであろう。
これは経済活動にあまりに過度な負担を強いることになる。この負担は、まさに、ワーキングプア、フリーター、派遣労働、
所得格差、労働強化、産業空洞化、地方の疲弊という形で表れているのである。(中略)今日、われわれは、消費者としては
できるだけ安いものを買おうとしている。投資家としては株で利益を得たいと思っている。しかし、そのことがまさに、
市場競争を激化させ、組織的な労働を解体し、結果として、労働者としての『われわれ』は大変な目にあっているのである。」
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 解)この考え方を、もし日本だけで当てはめたら国家そのものが破滅してしまう。何故なら、それを狙った他国が
  逆の方針をするからだ。日本が「ゆとり教育」で、その世代の骨抜きをしている間に、中国が一子政策を採り
  両親のエネルギーを集中したのである。だから現在の日本の衰退が深刻なのである。 
  しかし、世界がブロック化をして、その中で互いに規制することは可能だろう。 
  日本の衰退を、「成長モデルから衰退モデルへ」と衰退を脱生長と言い換え、気がついたら国家破滅!
  人口縮小に合わせて経済規模を均衡縮小を割り切ってする政策にすることは、間違ってはない。

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