「資本主義は嫌いですか
  ―それでもマネーは世界を動かす 」ー 竹森 俊平 (著)


サブプライム・ローンの分析については、分かりやすい文章である。 もっと分かりやすく言えば、
債務不履行という債権入りの毒饅頭アメリカの格付け機関の保障付きで世界中にばら撒いてしまったのである。
そのため他の健全な住宅ローン債権まで売買ができなくなったのだから、問題は大きい。
その上に、アメリカのドルや債権まで不信感を持たれるようになったのである。
アメリカの一極支配のドル体制が崩壊をしたのである。 それだけ、この激震は大きいことを何度も書いてきた。
ーまずは、その部分から。
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P−27 
 サブプライムについては、日経新聞だと「信用力の低い個人向け住宅融資」という注釈が必ず付くことになっている
(筆者も日経の紙面に書いた時に経験したので聞違いない。)
筆者はひそかにこの注釈がなくなるXデイを楽しみにしている。これだけ毎日、新聞に顔を出す単語なのに、
いつまで注釈が必要なのか。 ともかく、このローンは審査基準が非常に甘い住宅ローンである。
普通のプライムローンは、連邦政府による与信審査のガイドラインがあり、金融機関は厳格な与信審査をしなければならないのに、
サププライムは、このガイドラインに従わないからである。 だから、「特殊」な住宅ローンというわけだ。
 サブブライムが連邦政府ガイドラインに従わないのは、それを供紹する金融機関、すなわち住宅ローン業昔が、
連邦政府の監督下に置かれていない場合が多いからである。 実際、住宅ローン業者全体の半分だけが連邦政府の監督下にあり、
残りの半分はよリルーズだといわれる州政府の監督を受けている。
さて、日経のサブプライムについての注釈は「信用力の低い個人向け」ということだが、何もサブプライムの供給者が、
「うちは信用力の低い個人を相手にしている」と宣伝しているわけでない。
プライムローンを申請しても、承認される見込みのない「信用力の低い個人」が、そのローンを借りに行くのである。
 サブブヲイムローンの審査は本当にいいかげんらしい。 「所得なし」「審査なし」「資産なし」でも審査に通る。
住宅ローンの場合、住宅が抵当に取られているから、最低限の安全性は確保されているという判断があるのかもしれないが、
それにしてもなぜ、こんなに危険な住宅ローンが罷り通るのだろうか。  理由はおそらく政治である。
クリントン政権、ブッシニ政権と続く歴代のアメリカの政治は、普通のローンの審査には通らない低所得者が、
特殊なルートであっても持ち家を持てるようにすることが政治的に有利と判断した。それに加えて、クリントン政権とか、
ブッシュ政権の「オーナーシップ・ソサエティー」の哲学とかも、「サブブライム」の存在を正当化する根拠になっている。
 2004年末において、アメリカにおける住宅ローンの60%は証券化されていた。 当時EU証券化は15%でしかなかった。
「住宅ローン抵当証券」は、最初は普通の住宅ローンについて開発されたが、90年代半ばから政治的空気に押されて
サブプライム・ローンの証券化が開発された。 普通のローンもサブプライムも、証券化をする原理はかわりないからだ。
 それが諸悪の根源になったのである。
サブプライムの歴史がなかったことと、住宅が右上がりに上がりだしたこともあり、サブプライムの危険性が見落された。
さらにサブプライムの市場では連邦政府の規制や、監督が不十分なため、モラル・ハザードが起こりやすくなった。
更に、このサブプライムの毒性を隠す現代錬金術として、投資適格性を審査するムーディーズやS&Pなどの主要格付け機関は、
それにトリプルAという最上の格付けを与えてしまった。 格付け機関が有毒廃棄物にお墨付きを与えてしまった。
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世界の景気を主導してきたのは、アメリカの住宅バブルと言ってよい。 住宅産業は、産業のあらゆる要素が含まれている。
国内景気を維持するためにドルを刷って、アメリカ国内の「信用の少ない人たち」に、ほぼ無審査で貸し出していたのである。 
ヘリコプターから貧民街に金をバラマクようにである。その毒入債権を保証書付きで撒いたのだから根は深い。


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