閑話小題 ~TV映画、感想記

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   * 『友罪』 ~TV映画、感想記
<ジャーナリストの夢を諦めて町工場で働き始めた益田は、同じ時期に入社した
鈴木と出会う。無口で影のある鈴木は周囲との交流を避けている様子だったが、
同じ年の益田とは少しずつ打ち解けていく。しかしある出来事をきっかけに、
益田は鈴木が17年前の連続児童殺傷事件の犯人なのではないかと疑いを抱く
ようになり……。>
 そこには、他にも幾つかの深い心の傷を負った過去を持つ男たちが次々と
同時進行で現われてくる重い内容。そのどれもこれもが、そこまで深くないと
しても似た経験を誰もが持っている? 少年の頃、親友への虐めを助けてやれず
死なせてしまったとか…  死に至らなくとも、何故、あの時、助けてやれな
かったとかの傷を心に誰も持つ? 何だったのだろう我ながら情けない私は?…
【タクシーの運転手(佐藤浩市)は息子が交通事故で三人を殺し、家族を解体して
償いの日々を送っていた。その子供が、結婚をするのが許せない。そして、孫が
生れて幸せになることも、父親として許せない。】 等の葛藤が、次々と。
重すぎて中断を入れ、分けることでやっと見終えることが出来たが、見終えた
後は、加害者側の、苦悩と、理不尽な怒りが、透けて見えるようでなかなかの
出来栄え。10年ほど前に、突如、『少年A』がマスコミに再登場したが、それを
再現したような内容。
   * 『あゝ、荒野』 ~TV映画、感想記
 これと同時進行で、『あゝ、荒野 前篇・後篇』作品二本を見た。
寺山修司が 遺した唯一の兆編小説を映画化したもの。これも底辺に生きる若者
の生き様を描写したものだが、深い心の傷から血がしたたり落ちてくるような
様は鬼気迫るもの。人生、特に若者が生き場をみつけることの難しさは… 
寺山はあとがきで
「この小説をモダン・ジャズの手法によって書いてみようと思っていた。」とし、
「大雑把なストーリーをコードネームとしてきめておいて、あとは全くの即興
描写で埋めていくというやり方」で書いたと記している。
有り余る時間とエネルギーが無いと、前後編通して5時間の大作は見れない。
友罪』と同時進行で見るには、うってつけの内容だ。
 ~で、これも偶然、去年の同月同日の内容の文脈に丁度、つながる。
熊、寅のタッチじゃ軽すぎるが… 犯人の家族にも過酷な人生が待っている。

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6266,閑話小題 ~つれづれに ー新潟・少女殺人事件
2018年05月10日(木)
    * 新潟・少女殺人事件
熊: 県知事の買春事件で大騒ぎの後に、父子五頭山遭難騒ぎにつづいて全国区
  ニュースが続くね。何でわざわざ、死体を線路に置いたのだろうね。
寅: バラバラにして死因を隠すためだろうか? それを目撃する快楽を味わう
  快楽犯も考えられるけど、それは考えすぎ?。 白い車で、黒服の男という
  から、2~3割?は、該当するからね。女児が朝、しつこく声をかけられたと
  いうから、何処かの監視カメラに録画されている可能性が高いし… 
  解決は早いだろうよ。昨年9月には、同じ小学校の女子児童が男に声を掛け
  られたり体を触られたりする不審者情報が3件あったというしね。
熊: 死んで何時間すると轢かれても出血しないことを、この事件で知ったけど、
  犯人も知らなかったみたいだね。ということは、死因を隠したかった?と
  しても、殺した上に… 
寅: 俺さ、北欧の刑事モノ連続ドラマに、この数年嵌っているので、こういう
  異常な事件になると、色いろ思い浮ぶんだ。俺なら、阿賀野川の河口に
  捨てるとか…。イギリス、北欧モノには、少年少女への暴行殺人が、結構、
  多いし。としても、異常過ぎる事件だね、これは。 何も知らない子供の頃
  から、異常ドラマを見て育ったら、映画と現実の境目がつかなくなっても
  不思議でないさ。
大家: 情報化がもたらした、マイナスの一面ですか。全国版で、リアルタイム
  の犯人探しとして扱われるのだろうが… 私も、興味本位では、その一人。
  マスコミにとって、犯人逮捕が遅れれば遅れるほど、視聴者の興味が膨らむ
  ため、有難いのだろうがね。
寅:<9月に、逮捕していれば>のそもそも論が、当然てるため、警察は必死に
  なるから。 9月、5月からみて、学生が考えれるね。
熊: 昨日さ、たまたま寅さんに勧められて録画していた北欧の刑事モノを見た
  けど、酷い内容。 その内容を思わせる事件で、何か、背筋がゾッとしたよ。

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   * 身近な野生動物は
 庭に来た「雉」を考えているうちに、野生動物といえば、近所を縄張りにする
カラスと早朝の川辺や、庭に飛来する野鳥か、時どき居間に侵入してくる蝙蝠と、
虫を改めて認識した。雉、鴨、鶯など渡り鳥が多いのは地方の盆地なればこそ。
野鳥は、誰の助けも借りず、仲間同士で営々と生延びている。その中で、カラス
について、ここで何度かテーマにしてきた。TVでカードをかすめ取り、券売機
にさし込もうと試みる錦糸町駅のカラスのレポートを放映していた。元もとペット
で飼われていたようで、肩や腕に平気で乗っかる。 私の家のペットは代々、
小鳥派で、インコ。 7代、小桜インコだったが、メキシコ黄金インコに、そして
今では、世界最小のルリハインコで、歴代で一番の7年生存で、唯一の芸、
「枝回転」を披露している。

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4437, 「死ぬのが怖い」とはどういうことか ー7 
2013年05月10日(金)
     ー「死ぬのが怖い」とはどういうことかー 前野 隆司著
  * ルート6 幸福学研究からのアプローチ(幸福学の道)
《 幸福になるための因子は、自己実現と成長、つながりと感謝、楽観性、他人
の目を気にしない生き方。それを満たすのは、自己を捨て、無我、無私を実現
する達人の生き方。欲にも、生死にも、他人との争いごとに拘らず、達観して
静かに生きる姿勢。ここに達成した人は、持続的至福に達することが出来る》 
これが、幸福学の結論。 現在の状況を冷静にみると、
「これが人生、で、もう一度同じ人生を歩みたい」という現在の心境と同じ。
  ー他人と比較しないことによる幸せこそ、人生の要諦。 その辺りよりー
≪ 幸福学とは、要するに、幸せに効く主観的な要因は何かを明らかにする研究。
 その結果、僕たちの行ったアンケートの範囲では、幸福の要因は大きく
 四つの因子に分けられることがわかった。
・一つ目は、自己実現や自己能力に関する因子。目標を持っているか、直近の目標
  と将来の目標に一貫性があるか、自己統制感が高いか、自尊心が高いか、など。
・二つ目は、つながりに関する因子。他人に対して親切か、様々な出来事に
  感謝しているか、多様な知人がいるか、など。
・三つ目は、楽観因子。楽観的か、ポジティブか。
・四つ目は、他人と自分を比べない因子。他人と自分を比較しない傾向が高いか。
 ここでは、四つ目の因子に注目しよう。 すなわち、「他人と自分を比べない
  ことによる幸福」について。 自分を他人と比較しない人には、長続きする
 幸福が訪れると考えられる。千五百人への調査結果も、それを表している。
つまり、千五百人の回答者のうち、他人と自分を比較しない傾向が強い人は
幸福である比率が高く、他人と自分を比較する
傾向が強い人は不幸である比率が高かったのだ。
 自分と他人を比較しない人々には二つのタイプがあると考えられる。
他人を見ないタイプと、自分を見ないタイプだ。前者は、自分だけを見て他人
を見ないタイプ。周りのことを気にしないマイペースタイプだ。 我が道を
行くから、周りなど関係ない。場合によっては、独りよがりだったり、わがまま
だったりするかもしれない。自分は幸せでも、他人には迷惑をかけている
「自分勝手」タイプかもしれない。後者の自分を見ないタイプは、逆に、
世界は見るが自分を見ないタイプ。何が欲しい、こうなりたい、などの自我の
欲求があまり強くないから、他人と自分を比べることにそもそも興味がない。
悪くいえば向上心や競争心がない。なすがまま、自然のまま、だ。
 たとえば、武道の達人をイメージしてみていただきたい。茶道、華道、座禅
などでもいい。 凛として、姿勢がよい。何かあっても、動じない。静を以て
動を制す。普段は静かだが、実は相手を倒す力を秘めている。無駄に力んだり
せず、相手の力をすっと利用して、自分の思いどおりに世界を動かす。しかし、
私利私欲はない。判断は大局的。全体が見えている緊張感のある空気を醸し
出すが、自分のためには怒らない。思考の対象は常に世界だ。世界のために
行動する包容力。名声を得ていたり、人望が厚かったりするが、決して自慢など
しない。 もちろん、他人と自分の比較などしない。≫
▼ どうも世の中、嫉妬と苛めの糸で哀れなほど。私住む城下町は長年の柵
 で、雁字搦めの蛸壺社会。8割以上が地元出身者で占められ、それが全社会。
学校関係者以外は殆ど付き合いがないが、垣間見えてくる世界は箱庭のようで
面白い。知識を持たない人の無意識の科学は、身近の人との比較しかない。
不幸になって当然。それも私の主観による思い込み。「横を見ないで、縦
(今、ここ、自分)を見て生きる」と割切ってしまえば、良いが。
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4063, 本当は怖い抗うつ剤 ー2
2012年05月10日(木)
  * うつ病になったら、どうしたらいいのか。      
              { 浜松医科大名誉教授 高田明和 }
 倒産の惨劇を身近で見ていたので、二年間は落ち込むのは避けられないと判断。 
最小にするためスポーツジム通いと、打ち込める対象を加えることを考えた。
一つ間違えると欝に伴う暴発か、破滅になっていく。それがiPadとシネマと
 蔵書の再読と、世界の潮流の鳥瞰などを、逆に徹底的に楽しむことであった。
それと、中村天風の「積極一貫」の思想書を、身近に置いて何度も読み返した。
二年にまだ一年あるが、一息ついた後半の方が危ないのかもしれない。
 その私が予防策でとった方法がそのまま、治療法として研究されていた。
運動と、考え方、受け止め方をプラスにすることだ。
≪ うつ病の治療法として確立しているのが「運動」である。体を動かすことが
精神によい影響を与えることは様々な研究で示されている。第二は「ものの考え方」
である。私たちは競争社会に生きている。競争とは相手に勝つことを目的とする。
もし負ければ落伍者になる。一度敗北すると、将来がないように思うのだ。
さらに大事なことは、どのような分野でも自分より勝れた人がいるという事実。
 例えば野球にイチローがいて、ゴルフには石川遼がいるのと同じようなものだ。
努力は大事だが、自分が及ぼないからといって自分を責めていたら人は決して
心の幸せは得られない。・・・堀口大學は自身の『座右の銘』という詩で
「暮らしは分が大事です。気楽が何より薬です そねむ心は自分より 以外の
ものは傷つけぬ」と詠んでいる。自分以外とは社会的ランクのことである。
今の自分のランクを受け入れ、それでよいのだとする以外に心は楽にならない。
禅では「不思善 不思悪」といって、思い出さないことをもって最も尊いとする。
といって、無理のことなら、思い浮かんだら、しばらく放っておいて手を出すな、
必ずその思いは消えると、禅では教えている。 実際に、どのような思いも
5秒で消える。・・・ ≫
▼ 「どんな思いも5秒で消える」は、言いえて妙である。出るのは仕方が
 ないが、なるべく、そこで切るように心がければよい。全ては二年で落着くし、
目先は五秒のフラッシュで出てきた思いの延長を考えないこと。特に寝付けない
布団の中での苦悩の嵐は、訓練で最小にすることが可能。 そのためにiPod
を枕元に置いている。最近は、ほとんど夜半、使うことはないが、音楽は効く。

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5169,閑話小題 ~どっちに失礼?
2015年05月10日(日)
    * どっちに失礼?
 猿の赤ちゃんの「シャーロット」の名問題で、家内が『私も失礼だと思う!』
と言った時、思わず出たジョークが、『どっちが?』だが、反応はゼロ。
そのジョークを即座に理解出来る玉?ではないらしい。直ぐにブログに取上げ
ようとしたが、その辺の世間びとに配慮して自重した。 獣を軽くみるのは、
人間のエゴの思い上がりである。 朝日の天声人語が、上手い解説である。
≪ イギリス人はユーモアが好きだ。苦しいときほど必要だと考えるらしい。
 第2次大戦中、ロンドンはドイツ軍の空襲を受けた。動物園に爆弾が落ちた
ときは、タイムズ紙が「しかし、猿たちの士気はいささかも衰えていない」
と書いたそうだ ●考えてみると、これは「猿たち」が利いている。
猿山を眺めれば、彼らがわれわれに最も近い動物であるとよく分かる。
ゾウやキリンではあまり面白くない●古びた話を、大分市高崎山自然動物園
赤ちゃん猿の命名騒動に思い出した。英王室に誕生した王女と同じシャーロット
と名づけたら、「失礼だ」という批判が山と届いた。これも猿ゆえだろう
●ウサギやカピバラなら、騒動にはならなかったと思われる。ではカバはどうか
と問われると困るけれど、ユーモラスではある。英王室の広報は鷹揚に
「赤ちゃん猿の命名は動物園の自由」と語る。結局、名前はそのままと決まった。
「失礼」を案じた人たちも、先方の対応に少し気が楽になっただろうか
●ロンドン空襲に話を戻せば、半壊したある百貨店は「本日より入り口を
拡張しました」という看板を出したそうだ。やせ我慢で繰り出した泣き笑いの
ユーモアに、お国柄を見る思いがする。そういえばきのうは、英国にとって
対独戦の勝利から70年の日だった●健やかなプリンセスの誕生から世界注視の
総選挙と、英国発のニュースが続く。日本の皇室ともゆかりの深い王室である。
美しい5月の慶事を、遠くより祝福申し上げる。≫
▲ 今回の騒動について、文化人類学者は「人々の深層にある獣に対する
 差別意識が表れた」という。 また「一部の人たちが英王室の王女の名前に
日本の皇室を重ね、敏感に反応したのだろう」と。「(失礼なのは)どっちが?」
のジョークも、我ながら人類への皮肉である。 同じ島国でも歴史が違うと・・
   * 連休での渋滞原因とは
 連休での観光地の車の渋滞原因は、意外なところにある。高速道のトンネルを
抜けたときの陽光に、直ぐに眼が馴染めずスピードを落とす。その小さな積み
かさねが、数百、数千台が積み重なって渋滞になってしまう。その上、登り坂で、
少しスピードが落ちてしまうが、それに気づかないことの積重ねも渋滞原因に
なっている。要は、それぞれの小さな減速の重なりが、原因とか。 
それと、普段、遠出をしたことがないドライバーの不慣れが重なるため。
・・・・・・
5899,『しあわせ仮説』 -5  
2017年05月10日(水)
           『しあわせ仮説』ジョナサン・ハイト著 
   * 危機にぶち当たった時の対処   
≪ 人は危機に当たった時の対処に主に3つの方法で対処する。
・能動的対処:(問題解決のための直接行動)
・回避的対処:(その出来事を否定したり、薬物などで気を紛らわせたり)
・再評価:(思考を正したり、希望の兆しを探したり、心の内部を変える)
楽観主義者は、能動的対処と再評価の間で揺れて、対処の中で能動的
物語の粗筋をつくっていき、悲観主義者は回避的対処と再評価の間で消極的
物語、意味づけをしていく。楽観主義そのものに意味(価値)があるのでは
なく、楽観主義者がたやすく見出す「意味づけ」にある。~P/217 ≫ 

▼ 態度価値といえば、フランクルである。 彼によれば、
【人間が実現できる価値は創造価値、体験価値、 態度価値の3つに分類される。
・創造価値とは、人間が行動したり何かを作ったりすることで実現される価値で。
仕事をしたり、芸術作品を創作したりすることがこれに当たる。
・体験価値とは、人間が何かを体験することで実現される価値である。
芸術を鑑賞したり、自然の美しさを体験したり、あるいは人を愛したりする
ことでこの価値は実現される。
・態度価値とは、人間が運命を受け止める態度によって実現される価値である。
病や貧困やその他様々な苦痛の前で活動の自由(創造価値)を奪われ、楽しみ
(体験価値)が奪われたとしても、その運命を受け止める態度を決める自由が
人間に残されている。】
 これから危機の対処方法をみると、人間としての生きる意味そのままが現れ
出てくる。再評価が態度価値になる。「受け止め方」を変えることになる。
価値実現のために、「意味づけ」「物語化」が必要で、態度価値を冷静な視線
で捉えておかなければならない。6年前の節目で、まず整理したのが、態度価値。
危機はチャンスでもある。チャンスは、節目を全身で叩きつける切れ目を凝視
する機会にすること。新たな支点で世界をみるための既成概念を叩き壊すこと。
 危機があればこそ物語が生まれる。世界が広がっていくのである。

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5534,若者よ、外に出よ! ー⑬ 19世紀の芸術に触れろ ~B
2016年05月10日(火)
               『人生の教科書』なかにし礼
 ここで、若者に、<海外に出て、自然と、芸術作品に触れ、読書などで
教養を積み、恋愛をしろ>と勧める。これは若者だけでなく、壮年、老年に
も言えること。情報化社会の中で、クラシックをジックリと聴く余裕は少ない。
しかし、今ではアイフォンがあり、何千、何万の音楽を入れておくことが可能。
更に今では、定額のネット配信で好きな音楽を好きな時間に聴くことができる。
そのベースとなる19世紀クラシック音楽鑑賞を趣味にすることを勧める。
  * なぜクラシックを聴くべきなのか
≪ 芸術を学ぶ際、音楽なら、黙ってクラシックを聴くこと。いまだに
クラシックは不滅の音楽なのだから、それを聴くことが趣味になれば最高だ。
たとえ趣味となり得なくても聴くべきである。
 特に、やはり19世紀の音楽。18世紀にはモーツァルトがいるけど、彼の死後、
すぐベートーヴェンへ、19世紀の音楽へと繋がっていく。ベートーヴェンから
始まって、シューベルトショパンブラームスワーグナーマーラー
ブルックナーベルリオーズ……とにかく19世紀だ。
 ロマン派の時代である19世紀は、前世紀の革命時代が終わり、
「人間は進化する」ことを人類が知った時代である。愛によって人間は死ぬ
こともできるし、愛によって罪を犯すこともできる。そして「人間は進化して
神にもなれる」という思想を、芸術家たちが作品の中に叩き込んだ。
19世紀は人間の可能性のすべてを歌いきった時代なのである。
 文学の世界でも、トルストイドストエフスキーバルザック・ユーゴ、
アレクサンドル・デュマスタンダールゲーテバイロン、シラー、ボード
レール・ベルレーヌ、ランボーオスカー・ワイルドなど、大作家が生きた
時代はすべて19世紀である。
 19世紀という時代を常に自分の心の中に持っていようとするには、音楽を聴く
ことを日常の習慣にしてしまうことだ。この頃の作品は、今や不滅の作品群だ。
20世紀になるとそれらはすべて別の音楽になっていってしまうし、言うなれば
19世紀の残骸のようなものだ。19世紀の音楽を楽しめなかったら、その人間の
精神生活はすごく貧弱なものになると思う。 ≫
▼ それでは、絵画はどうだった調べてみると、
【19世紀はもっとも絵画が進化した時代と言っても過言ではない。現代絵画の
巨匠ピカソマティスムンクシャガールなど全員がその影響を受けている。
16世紀まではイタリアが、18世紀はフランスが芸術の最先端。ゴッホは19世紀
終わりの画家である。・・】とある。その背景には、国力の成熟もあるようだ。
学生時代に、安いステレオを買って、世界の民謡、ジャズ、アメリカン
ポップス、クラシックを独りコーヒーを飲みながら聴くのが楽しみだった。
 大都会の中の孤独は、音楽と読書でまぎらわすのが一番だったが、後から
考えてみると、大都会の中の孤独こそ、一番の環境だったことになる。
早稲田大学近くの寮、今でいう「シェアハウス」の25人の地方出の共同生活
から垣間見た人間観察と、クラブ、ゼミ、世界旅行と、恵まれた経験だった。