2007年03月14日(水)
2171, 考える日々               −読書日記
    池田晶子著 毎日新聞社出版

    この本は、9年前の『サンデー毎日』の連載コラムをまとめたものである。
    一昔前のためか、少し感覚がずれてはいるが、それでも彼女独特の現世、
    そして現象への白けた眼が面白い。私も、知人にはアウトサイダーとか、
    大変な人と、思われている?が、それをむしろ目指しているのだから、始末が悪い?。
    しかし、彼女の視線は私のような中途半端ではない。
    そういえば、哲学者の中嶋義道も「哲学者というならず者がいる 」
    という単行本を出しているほど、奇人を自称している。
    彼女の本を読んでいると、何か親しい友人と語らっているような気持になる
    から不思議である。 世間の現象を醒めた眼で見据えているところが同調できる。
    この本の中の面白いところを書き出して、考えてみよう。
 
−酔うほどに冴える、はずだったがーより 
 ー P164ー
ーかっては、すごかった。普通の成人男子は、ほぼ間違いなく、先に潰れた。
それも私の場合、相手が潰れるまで見極めて、しかし、それをしっかり覚えているから、
相手はたまったものではない。言ったこと、口走ったこと、その状況の仔細まで、
全部覚えているのである。それだけ圧倒されて、彼らは早々酔っ払ったのではないか。
仕方ない。私は、酔うほどに冴えわたる体質なのである。
酔うほどに、理性と知性が燦然と冴えわたり,全宇宙の全現象が見える。
わかる、わかった、という感じになる。

    妄想ではない。じじつ、そうやって手に入れた認識はたくさんある。
    飲みながら考えるのが面白くて、かっては、そうしながら、
    認識メモをつけていた。またの名を『酔っ払いの覚書』というそれは、
    さながらウィゲンシュタインばりの、とまでは言わないが、
    その一瞬に閃く洞察を?まえてとじこめた断片群、これが、
    けっこう今の仕事の核の部分になっている。

 酒のことを「スピリット]]と名づけた感性は人類に共通しているようだ。
あの液体は、私にとって、明らかに「精神」であり、思考の円滑油もしくは
起爆剤として作用する。いや、作用したのだった、かっては。
ところが最近は、飲むと考えるのが面倒になってくる。

 ー P−166ー
政治家や偉いさんなど、高級料亭で高級な酒を飲みながら、仕事の話をするという、
その感覚が信じられない。酒がもったいない、酒に申し訳ない、私ならそう信じる。
貧乏性ではない、仁義に欠くと感じるのである。・・・・
 男性が、女性のいる店にのみに行く、そのことだけで私はその人を信じなくなる。
ああ、この人は、酒を飲みたいんじゃないんだ。・・・・

   この仕事を始めた頃は、編集者に連れられて、いわゆる『文壇バー』
   なるところにも何度か行ったが正直なところ、ああいうところは好きではない。
   そうは言っても狭い業界らしく、互いにどこの誰かと言うのは知っているのだろう。
   見てみぬふりをしながら強烈に牽制しあっているのが、よくわかる。
   有名作家が太鼓持ちの編集者を引き連れて入ってくると、
   店の雰囲気ががらりと変わる。あっちでヒソヒソ、こっちでヒソヒソ、
   なかで如才ないヤツはオベンチャラを言いに出向くし、作家は作家で、
   俺のことを知らぬかという顔で見回しているから、アンタなんか知らないよ
   という顔で、意地でも続けたりする。 うまいわけが無い。

やっぱり酒は、大事に飲みたい。少なくとも私にとっては、人生における大事な時間。
意に染まぬ人と飲むよりも、断然ひとりの方がいい。
まだ覚めやらぬまま、日も暮れてきた。今日の仕事は、これでお終い、これ一本。
さて、酒ビンを抱えて、今宵も私はスピリットの旅に出る。
ーー

   解)この本のあるページに、この時期に小さなガン細胞が発見された、とあった。
    死因は腎臓ガンというから、やはり酒の飲みすぎ?ということか。
    酒は般若湯というとおり、頭を中を活性化させる。
    凡人はそれを活用できないが、哲学者にとって、思考活性水として
    思考の飛躍にはモッテコイであるが、それが命取りになってしまった。
    それにしても生半可な酒飲みでない。
    酔ったときの一瞬の知恵を掬い取ってしまうというのも、彼女ならではである。
    また、文壇バーの文士様の姿を面白おかしく描写しているが、
    だいたい酔っ払いなど、こんなものだ。
    
    何処かの街の御名士様溜まり場バーなど、ほぼ同じである。
    私自身、そういう御名士様溜まり場バーには、一切行かない。
    スナックでも4千円までの店しか行かないからニアミスはない。
    寂れた、うら悲しそうな小料理屋かスナックで、オダをあげるのが好きである。
    
      酒に沈没したオナゴ哲学者・池田晶子献杯
                              o(▽^*)ノ~~=バイ
・・・・・・・・