50歳半ば頃から同級会では、年金か成人病の自慢のしあいか、誰かの死の話が中心になる。
青春時代に自分の体つきや身なりを気にしたり、性体験を陰で話したり、猥談を話したくなる時期があるが、
それと同じく、自分の「体調」や「健康体操」について語りはじめる老人の「健康談議」を「老人の猥談」というらしい。 
五十歳代半ばの下半身の衰えは男の共通の話題。 その次は癌体験か糖尿病か心臓病などの成人病の披露のしあい。
こういう場しか、深刻な悩みを聞いてくれるところがないこともある。 それを老人の猥談とは上手くいったものだ。
要するに下半身のことや持病の露出は、人様の前では極力避けるべきである。
猥談に関しては家では御法度であった。マナーとして当然のことだが、それが平気でいう人がいて驚くことがある。
母からは、「匂いのするような話をしないこと」が刷り込まれていた。
それと同じことが、「自分の持病を公然と話すことが、老人の猥談談義」というと、なるほど肯ける。
言うなら、抽象的に、なるべきは人前では言わないことである。
歳を重ねるほど二重三重に注意しなくてはなるまい。

60歳までは死は後ろから迫ってくるが、70歳になると前からくる感じになるという。
だから互いに傷口を披露したくなるのだろう。

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