2008年02月05日(火)
2498, 無くてはならぬもの −6
 ? 一度だけの人生 ―どこに根を張るかー

 P−196
他人とばかり比べないで世界中に、私はたった一人しかいないんだ、とかけがいのない自分という存在ということを、
もういちど、しっかり見出してほしい、と。あなた方の人生は誰にも代わってもらうことはできないし、
しかもそれは二度と繰り返すことができない一度限りの人生なのだ。それが本当にわかってないと、
人生をどう生きるか、という問題は、真剣に考えていくことができない。
 p−199
たとえどんな小さな仕事でも、自分が一生をかけてやりとげる、そういう人生の目的を
見出してほしい。そうして二度と戻ってこない一日一日を、そのことに打ち込んでゆく。
それは無限の希望なのである。天才とは、努力をする人間なのである、といった人がいる。
私たちの個性というのは、何かに生涯を通して何かに打ち込んでいく、そういう努力を通して形成されていくもの。
あなたは社会的に成功しなくてもよい。自分がやりたい事を一度かぎりの人生に打ち込んで努力してみたらよいではないか。
そのことに10年打ち込んでみたらどうか。その道ではエキスパートになるだろう。
一流大学を出ているなど、誰も問題にはしない。どんな小さなことでも、これが自分がしたいことを生涯を通して行えば、
世界のために何か貢献することができるのである。それで途中で倒れることがあっても、一日一日を、
そういう仕事にうちこんでいれば、人生はそれで良いのではないだろうか。
 P−202
亡くなった和辻哲郎が若いときに書いた「樹の根」というエッセーを思い出す。
「偶然再興」の中に収められ文章であるが、「・・・ある時、砂に食い込んだ松の木の複雑な根を見守ることができた。
地上と地下姿があまりにも違っていたのである。楽しそうに葉先をそろえた針葉と、それに比べて地下の根は。
戦い、もがき、苦しみ、精一杯の努力をしつくしたように、枝から枝と分かれて、乱れた女の髪のごとく、
地上の枝幹の総量より多いと思われる太い根、細い根を無数にもって、いっせいに大地に抱きついている。
私は、こういう根があることを知っていた。しかしそれを、目の前にまざまざと見たときに、
思わず驚異の情に打たれぬわけには行かなかった。
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「順境には枝を張れ、逆境には根を張れ」という言葉があるが、当時、この「樹の根」のエッセーの言葉が心の支えであった。
個性とは、自分が人生をかけて打ち込んだ中でこそ生まれるもので、むしろ逆境の中でこそ形成される。
38年ぶりに読み返してみたが、私にとって「人生を支えてくれた三冊の本」の一冊であった。実は読み返して今、気づいた。
それでは他の二冊は何か? 近々に取り上げてみようか。大本教出口王仁三郎の本と、新約聖書である。

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