2004年12月23日(木)
1360, 金に泣く人笑う人 −1

藤本義一のこの本は「面白い」という点では抜群である。この人は、金銭と欲と詐欺にからむ小説を多く書いている。
雑学を多く知っていることに感心をする。一冊の本を書くために、多くの人とインタビューをするから尚更である。
 この本の中にも、ナルホドと唸る面白い話であふれている。
ーその幾つかを抜粋してみるー

12章の「騙しのカラクリ」が面白い。
ーペテンの技法・香具師の商法ー
 香具師の語源は 武士→野武士→野士→野師→香具師と考えるとよいだろう。
 武士になれない野武士が武器を取り上げられて、野士になり、武器を持たないので既に
‘士’でないので野師になったと考えればよい。野師は口先三寸で啖呵売をして騙す方法を考えた。
  つまり、言葉巧みに香具(仏具)を売る方法を考えた。この巧言を説明するとこういうようになる。

香具師は最低二人組む。
 一人の場合は単なる啖呵売りであり、これは詐欺行為でなく、大道芸人の一種と考えてもよい。
 例の「男はつらいよ」の寅次郎を考えればよい。二人以上で組織されるのが香具師の原則である。
 原則的な香具師は一人が山伏姿になり、いま一人は仏具を商う仏具士に化ける。
 先ず山伏に化けた男が京の方から里に下りてくる。錫杖を手にして高下駄を鳴らして歩く白装束は誰も目立つ異様さ。
 そして、山にこもって修行したという人という印象から村人達は尊敬の目を向ける。
 昔も今も詐欺師たちは魅力的な特色を持っていなくてはならない。
 この山伏は悠然と村を通り過ぎようとする。が、一軒の家の前で、急に立ち止まる。家は村の庄屋の場合が多い。
 庄屋でなくとも、村長と思われる豪勢な屋敷前である。

 山伏はその場で急変する。全身を痙攣させ、口から泡を吹かんばかりの苦しみ方をする。
 村人たちは仰天をして、庄屋を呼びに行く。庄屋は水を与えたり、苦しみを鎮めようとする。
 ようやく一息入れた山伏は苦しい息の下からいう。「この家の前に通りかかった時に、急に悪霊に取りつかれて
 身動きが出来なくなってしまった。出きれば、この家の仏壇を拝ませてほしい」
 庄屋は、これを拒むことはできない。自分の屋敷内に悪霊がいるといわれれば、恐怖心で招き入れる。
 仏壇の前で山伏は狂ったように祈りつづけて、やがて上半身を前にして気を失う。

 一同は不安げな様子で見守るが、山伏は息を吹き返して、座りなおして、やおら鈴を手にして委細を眺め
「や、四代前のご先祖様が成仏できずに迷うておられるぞ」と告げ、「この鈴の傷が何よりもそれを物語っている」と、
 指差す。 鈴にヒビワレが入っているのだ。 そこで、庄屋がどういうふうにすれば、霊がおさまるかと問うと。
「いずれ、この前に仏具師が通る故に、このものを何としても引き止めて、この鈴と新しい鈴を引き換えて買うがよろしい。
 どんな高い値段でも買うがよろしい」といって立ち去っていく。当然の事に、この時、庄屋は山伏に祈祷料を渡している。
 そして、この仲間が仏具師に化けて何日後に通る。 庄屋は鈴を交換してくれと頼むが、一応仲間は拒む。
 庄屋はさらに高い値段で買いたいといい、それではと譲り渡すのだ。
 これが香具師の騙しのテクニックである。これがカラクリであるが、何ということはない、
 はじめに来た香具師がヒビの入った鈴を袖に忍ばせて、仏壇に倒れた時に、その家の鈴と交換したのだ。
 庄屋は、元々あった、家の鈴を知らないで買わされていたのだ。

これが香具師の技法である。
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 ー以上である。
 Tvに出てくる霊媒師は、この応用をしているにすぎない。 詐欺の原型である。健康食品のメーカーが
 よく使う手口で、本の出版がある。本の出版自体が詐欺?の手口の一つだが、その新聞広告がミソなのだ。
 大新聞に出ている、健康食品に関する本の広告自体が、その手口になる。
「水溶性アガリスクの効用」とかいう奴だ。大新聞に水溶性アガリスクが癌を治すという刷り込みをしているのだ。
 その本には、あるメーカーを臭わせながら効用を化学的に説明して効果を実際、治った人のインタビューを載せている。
 新興宗教の場合は、手口が巧妙である。新規の人を入れようと、さっきの香具師の手口の応用をいくらでも仕掛けてくる。
 一番初歩的なのは、入り口の待合席にサクラを置いておき、何げなく根掘り葉掘り聞く。
 それを、教祖様が盗聴してズバリ当てた振りをする。 言葉のテクニックで済む。
                             ーつづく
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