ある時間の断片
12月13日 1968年

 昨日に続き、朝起きることが出来ない。結局起きたのが11時過ぎ。やっとタクシーに乗り、学校へ向かう。
昼飯後、ゼミに出席する。 この日は、ゼミの「ケーススタデー」は、私の番である。
私が創作した「ある会社内のトラブル」を具体的に述べて、それを全員が問いただし問題のありかや処理を考える。
質問に対して臨機応変に答えなくてはならないのだ。アガリはしなかったが、
一人一人の質問に辻褄を合わせなくてはならない。特に武沢教授の執拗な質問には、ドンドン追い詰められていった。
私のいい加減なところを徹底的に問い詰められてしまった。この時、このゼミの奥行きの深さに内心驚いてしまった。
ストリーを創ることで精一杯で、そのストーリーの組み立てのいい加減さを自分で気がついてない。
全員に囲まれて、竹刀であちこちから打ち込まれるのだ。 それも道場主から鋭い竹刀が彼方此方から来るのだから
たまったものではない。石川の「イヤミ」もその中で出た。 その後、総評の中で石川、植本、東レの照井さんの
私に対する性格分析があった。非常に鋭い内容で丸裸の自分を曝け出しているようであった。一生忘れられないだろう。

 ゼミ終了後、一年後輩の植本君を誘って飲みにいく。池袋の「嵯峨」「パブエリート」そして、
先日姉達といった赤坂の「ムゲン」のコースであった。 その日の鬱憤晴らしで、2時間も踊り狂う。
植本君も純粋で面白い男である。自意識過剰のところが他人に性格を変えられてしまう可能性がある。
その後、帰寮。駒村孝道が部屋に来る。学校で何かあったようで、大荒れであった。
部屋のウイスキーを飲んで、話を聞いてやる。 2時就寝。
 ー今日のゼミ、一人で全員を相手に受けて立つのもよい経験であった。よい学生時代の思い出になるだろう。
  真剣勝負の感じがしたが、舞台のステージに立っているようで面白いところもあった。