「 こころと脳の対話 」  潮出版社
                  河合隼雄 茂木健一郎
 第二回 箱庭と夢と無意識 
    《箱庭のなかの「生」と「死」》の要点からー

 京都にある河合隼雄の研究室で、「20数年ぶり」という箱庭づくりを終えた茂木健一朗。
  ー茂木の箱庭を見ながらの二人の対話のポイントをまとめてみたー 
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 河合隼雄はまず「意識と無意識の関係」を提示する。 箱庭で、ニワトリなりゴリラなどのアイテムを手に取る。
ここですでに、アイテム(意識)の背後にその人の無意識ーとば口ーが関わってくる。
「たとえば、ニワトリならニワトリが、心のなかに残っているわけですね。で、帰ろうと思ったら、本屋でニワトリの本が
パッと目に映ったりするとか。必ず買って読もうと。 それが、ユングのいう「シンクロニシティ」です」(P・102~103)。
この時、箱庭で選んだニワトリと本屋で見つけたニワトリとは因果関係はないです。大切なのは、自分の無意識と外のものとが
呼応するというほうです。 なぜか知らないけれど、箱庭の前に立ったらニワトリというアイテムを手にしてしまった。
そして、帰りに本屋に寄ったら、ニワトリの本にパッと目がとまって買ってしまった。
私のなかになぜかニワトリというかたちで無意識が働き出して、それがニワトリの本と呼応した。これが「シンクロニシティ」。
「意味ある偶然の一致」です。 ここには科学的な因果関係はまったくありません。でもこころにとって「意味」があるんです。
「この非因果的ということがものすごく大事なんです」と。
河合はこの無意識の非因果的連関のなかに、臨床の中でクライエント(患者)の生きる「意味」と「可能性」を探りだしてゆく。
「とくに近代科学以後は、因果関係を知るというのはすごく便利なことで、役に立つことでしょう。
因果関係がわかったら、こちらの意図で操作できるわけですから。
だからそっちへ行きすぎて、非因果的連関を見る態度を失ったんじゃないかと、僕らは思っているんですね。・・・・ 
僕なんかは、この非因果的連関のほうをけっこうおもしろがって見ているわけですね。 もちろん因果的にはつながらないんですよ。
ただ、ミーニング(意味)はあるわけだから、そのミーニングを知ろうというわけですね」。
(箱庭の世界は)「わからない。わからないのが大事なんです。だから、それが「可能性」なんです。だからこれを続けると、
その可能性が活躍したりするんですよ。 可能性がもう出てきてる。自分でもわからない可能性があって、そのへんが活躍しだす」
ーー                                                (本書より)。
解)
以上だが、「箱庭で、ニワトリなりゴリラなどのアイテムを手に取る、その背後に既に無意識ーとば口ーが関わってくる。
 それが既にシンクロニシティーの強力な引力になっている」というのが、この本の一番の要点である。
 たまたま本屋で、ニワトリの本を見つけたことと、因果関係はないということがものすごく大事というのが、面白い。
 その本屋になくても違うところで、違うニワトリの本を見つけるんじゃないか、それはそれで、意味ある偶然の一致になる。 
 人との出会いも似たようなもの。 ここでも、述べているが、全てがシンクロニシィテーである。
 たまたま何かのアイテムにエネルギーが集中しているから、その対象に意味ある偶然の一致が現れてくるだけ! なるほど。
                                          −つづく
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