「資本主義は嫌いですか」
     ―それでもマネーは世界を動かすー 竹森 俊平 (著)

 現在進行中のサブプライム問題、何処かで聞いたような感じをしていたが、この本で、気がついた。
ゲーテの「ファースト」の場面の悪魔の囁きー提案と瓜二つなのである。
アメリカは「ただの紙切れ」を刷って、世界中にばら撒いていたのである。
ドルや国債だけで事足りず、毒入り饅頭を売っていたのである。 
恐ろしいほど酷似した次の場面、サブプライム問題をキッカケとした恐慌とセットに歴史に残るだろう。

 *ゲーテファウスト」の狙い
P-151
「バブルの勢いに乗った世界経済の急成長」に対する弔辞(オビチュアリー)を捧げよう。
それについては、世界的な文豪に登場してもらって、その名文で結びたいと思う。
第一部は、「ペテン師か、天才か」いまでも議論が分かれているミシシッピー・バブルの仕掛け人、ジョン・ロウから話が始まった。
実は、ロウには、大経済学者ヨゼフ・シュンペーター以外にも、有名人のファンがいる。ほかでもない。
ドイツのワイマール公国枢密顧問官としてその行政に長年にわたって携わり、科学、経済、法律など学問全般に無類の博識を誇った
ドイッの文豪ヨハン・ヴオルフガング・ゲーテ(一七四九-一八三二)である。
 ゲーテが晩年に書いた戯曲「ファウスト」は、代表作として知られている。
 あらすじを簡単に説明すると、
老齢に達した学者ファウストは、悪魔メフィストフェレスとの間で、魂をかけた賭けをする。
もしファウストが「時よ、とどまれ、お前はじつに美しい」という言葉を口にしたなら、ファウストはその瞬間に魂を失うという賭け。
メフィストは、さまざまな崇高な瞬間をファウストに味わわせて、ファウストの口からこの言葉を引き出そうとする。
ファウストはいかに甘美な体験にも、この言葉を口にするほどの陶酔は許されない。
 ーー
第二幕の冒頭で.二人はひとつの王国を訪れる。その王国の財政は、ルイ一四世治下のフランスと同様に完全に破綻している。
「帝国の金庫は空っぼ」で、「寝床の枕も担保に入っている」という状態である。望帝を囲んで、宰相、大蔵卿などお歴々が
国の行く末を思い悩み、嘆き悲しんでいるところに、道化に化けたメフィストがひょっこり現れて、
王国の財政問題を一気に解決する妙案を持ちかける。 身動きの取れない状態に追い込まれていた皇帝やその臣下たちは、
メフィストのような悪魔の怪しげな提案にも乗らざるを得ない。しかしさすがは悪魔。彼の力で、この国の財政問題は解決する。
それは少し後の場面である。宰相が出てきて、その「良いニュース」を告げる。
(宰想)この歳になって、こんなよろこびを味わうとは思ってもみませんでした。
    ごらんください。すべての災いを福に転じた幸福の文章であります。
   「知りたいと望むすべての者に告げる。この紙片は干クローネの価値がある。
    皇帝領内に埋もれた無尽蔵の宝が保障する。直ぐにでも掘り出して兌換に当てる用意がある」
(皇帝)途方もないイカサマだ! だれが皇帝の著名をした? 罰しないでおくものか!
(大蔵卿)お忘れですか?その手で著名なさいました。
   皇帝自身がイカサマと思うような政策。皇帝領内に埋もた(?)無尽蔵の(?)宝(?)により保障することによって、
  「ただの紙切れ」を貨幣として流通させるという途方もない考えが、この国の財政立て直しのためにメフィスト
   ひねり出した妙案だった。
   しかし、このことによってこの国の財政は見事に立ち直る。しかも立ち直ったのは、財政だけではなかった。
  「過剰流動性」の力で、沈滞に喘いでいたこの国の経済は、みるみるうちに息を吹き返してきたのである。
   このケインズ経済学的処方箋の効能を、ゲーテは「大蔵卿」の口を通じてこう語らせる。
(大蔵卿) さっそく署名をいただきましたので、昨夜のうちに彫り師に刻ませ、どっさり刷り上げたのに印を捺しました。
   ほかに十クローネ。三十クローネ。五十クローネ。百クローネの紙幣にいたしました。国をあげて喜びにむせんでおります。
   町をごらんください。ひっそり死んであったようなのが生き返り、わき返っています。
   −−
  以上だが、
  皇帝がアメリカ大統領のブッシュか、メフィストアメリカを支配しているユダヤ資本家か、はたまたロスチャイルドか?
  しかし、最後は、それ故に自壊していく姿は、喜劇になる。いや、壮大な悲劇である。 

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