2004年07月21日(水)
1205, 実存哲学(3)ー哲学について−19
 ーマルクス−2

マルクスの考えでは、当時の資本主義社会は歴史的に見て、
対立なき社会が実現する二つ手前の発展段階とみなした。

近代技術はますます発達を続け、失業者はますます増加すると考えた。
その結果、いわゆる一般大衆が増加、彼らはいっそう生産手段から疎外され、
ますます限られた者に生産手段が握られてしまう。その結果、数の上で圧倒的な
労働階級が資本家を打倒し、生産手段を自らの手に収めることになる。
そしてこの革命が、歴史の繰り返しを終わりに導く。
この到達点に必然的に進んでいって、いったん理想郷が実現されると、もはや弁証的でなくなる。
生産手段は万人の所有者となり、万人の利益のためにつかわれる。

マルクスは哲学そのものを否定し、「哲学者は世界をさまざまに解釈してきただけだ。
大切なのは、世界を変革することである」と断じた。

しかしその予言は実現しなかった。それはマルクスが、一人よがりに自分の理論を科学的と思い込んだからである。
自分が生み出した社会主義を、「科学的社会主義」とよび、これが説得力があったためマルクス主義者が
ただのマルクスの個人的意見を「絶対的な事実」と考えてしまった。
彼らは未来の社会の姿を科学的に予測できると主張、自分たちが未来の側に立っていると盲信してしまった。
その結果「歴史がわれわれの側にある」がマルクス主義者の口ぐせになってしまい、敵はみな、
「歴史のごみ」として捨て去られるものと信じてしまった。

この考えが、20世紀に共産圏を中心として大虐殺を引き起こしてしまった。ソ連や中国では、数千万の大虐殺が生じた。
また現在の北朝鮮の不可解な体制は、このような考えの背景があるからだ。

当時、彼の思想は短期間に世界に大きな影響を及ぼした。これほど一時期に大きな影響を世界に与えた思想は歴史上ない。
1883年に、亡くなってからわずか70年で、世界の3分の1がマルクス主義の国家体制に
なってしまた。それは驚くべきことであり、それが歴史に残る大失敗であった。
芸術にたいしても、その真の役割は社会を批判をすることであると主張した。
芸術は革命の一つの道具とみなしたのだ。その結果、多くの芸術家がその影響を受けてしまった。
サルトルピカソなどは、その最たる人である。

現在でも多くの国で、その体制が残っているが、独裁の一種の建前として使われているにすぎない。
一度手にした権力を人間は、決して国家人民の為には使わない動物であることを
見落としていた。これほど理想と現実の差がある思想も過去になかった。

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