2005年07月12日(火)
1561, わたしの酒中日記 −13
 ー岐阜−1  1975年 9月末日

初めての仕入れで岐阜に来ている。高校の二年の時に父の仕入れの鞄持ちで来たことがある。
あのときの感覚を頼りに生まれての初めての仕入れである。
まずは、東京の現金問屋街で仕入れ、その後に名古屋廻りで岐阜に入った。

今回は婦人服である。生地の素材さえ知らない、まして流行など知る由もない。
しかし、全く経験のない「養老の滝」「ベーカリー」を立ち上げたことからみれば、遊びでしかない。
学生時代の合気道の経験が役に立つ。ただ虚心に対象と立ち向かえば、プロより強いということを信じればよい。
とにかく情報を仕入れること、それしかないのだ。そのためには歩き回るしかない。
それと自分の人間性を前面に出せば相手も反応する。一回目にしては、上手くいったようだ。
そして父と昔、泊まった宿に入る。懐かしい、本当に懐かしい。そこで夕飯を軽く食べた後に、街に出てみる。

知らない街で赤提灯を探すのは、何とも愉しいものだ。疲れのせいで、直ぐ近くの「なまずや」という鰻屋に入る。
鰻をここでは、むかしは「なまず」といったのが由来とか?
一人カウンターでまずは鰻を肴に酒を飲んでいると、小座敷で飲んでいた二人づれの一人が
話しかけてきた。今日、行ったメーカーの人だ。一緒に飲まないかということで、彼らの席にいく。
昔、父にお世話になったという。父のことを、一時間ほど彼らから聞かされる。

その後、彼らと柳ヶ瀬のスナックに行く。私の学生時代に大ヒットした「柳ヶ瀬ブルース」発祥の地である。
彼ら二人はかなりの遊び人のようだ。とにかく疲れたので、早々帰ってきた。
緊張した一日であった。反面、面白いのだ。買う立場は売り手からみたらお客様なのだ。
何か仕入れとはこういうものかと、少しは解りかけてきた。
 明日は大阪に行って、その日のうちに広島だ。未知な世界は、全てが冒険である。我ながら、よくやるよ! 
                                ーつづく
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