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『いのち楽しみ給え』吉川英明編 (講談社)
まずは、
第二章 人間の本質 から抜粋してみる
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理想のない漂泊者、感謝のない孤独、それは乞食の生涯だ。
西行法師と乞食とのちがいは、心にそれがあるかないかの違いでしかない。
評)理想ある漂流者、感謝のある孤独か〜詩は心だからである。 (『宮本武蔵』火の巻)
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今の足の向き方ひとつで生涯大きな違いが生じるのだ。 必然こうなるものだと
決定された人生などがあろうとは考えられない。偶然にまかせて歩くよりほか仕方がない。
評)必然と偶然、哲学の話になる。 (『宮本武蔵』火の蓋)
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一個の人生にしたところで、余り気まま暮しな人間や、物に困らないものが、却って、
幸福でない例を見ても、総括した民心というものにも、艱難する時代と、共栄謳歌する時代と、
こもごもの起伏があっていい。なければ却って、民心は倦む。 「新誉太閤記」
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生きようとすれば、あがきの爪が、何かをつかむ。 (『「本太平記」みなかみ帖)
評)最近の若者の大多数?は、あがきもしない。
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どんな大難も、一過を待てば、おのずから雲間に晴天を見せてくれる。(『「本太平記」帝獄帖)
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「なべて眼のあたりのことは、うこかし難い、また、変るなき鉄則に見えますが、
どんな現実というものも、じつは間断なく変っています、変るなと願っても、
推移せずにはおりませぬ。人の境遇も、人お互いの心も」(麻鳥) (「新・平家物語』静の巻)
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人と人との応接は、要するに鏡のようなものである。 驕慢は驕慢を映し、謙遜は謙遜を映す。
人の無礼に怒るのは、自分の反映へ怒っているようなものといえよう。(「三国志」 望蜀の巻)
評)人を恨めば穴二つ、ということか。
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はたらいた俺にはあるぞ夕涼み 「書簡・詩歌集」 評)はたらかぬ俺にはあるぞ時の味
老けて行く春を化粧の瓶の数 「書簡・詩歌集」 評)老けていく春をサプリの瓶の空
どん底の人に不思議な顔の光沢(つや)「書簡・詩歌集」 評)去年、癌で亡くなった人の顔
ーつづく
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