2005年06月08日(水)
1527, わたしの酒中日記−5
    金沢ー3
  ー1972年3月某日

とにかく部外者の目でみると、金沢は特異の街である。
加賀百万石の数百年の重みが詰まっている。それが酒場に集約しているから、
あちこちと探して歩くだけの価値が充分にある。 それと人間味も面白い。

今日は会社の島君に酒を誘われる。同期の男なのだが、現在所属している武蔵店に配送センターから
配属になったばかりの男だ。いい男なのだが、全く彼女ができないという。
何かオドオドしていて頼りがなさそうでモテナイ典型である。

店では日常的に、月に1度は飲みに誘われるが、一~二度喫茶店に行っただけで「自分の彼」にされてしまった。
噂が流れた瞬間から、他の誰も口を利かなくなるから女の職場は難しい。 その後は注意はしているが。
島君に、その話をしても信じない。今まで男だけの配送センターにいたためだろう。すべて需給のバランスである。

彼氏がいる女性ほど気楽に飲みに誘ってくる。「オイ!彼氏にいいのか?」というと、決まった返事が帰ってくる。
「彼は彼、私は私、別に悪いことをするわけじゃない。酒を一緒に飲んで何処が悪い?
あっちはあっちで適当にやっているわ!」である。 女というものは?!お互い、その方が上手くいくのだろう。
しかし一つ間違えば当て馬の一匹だ。いや、一頭か。もっとも、その方が面白いが、常に試されているようだ。

彼女達は女子寮で話し合っている? 「誘ったが駄目だった、今度あんた誘ってみたら?」と。
女性の職場は監視がキツイ!半面、個々人は面白い人が多い。
例外はいるが。女を使えれば天下を取れるという。使えなくてもよいから仲良くしたいが。
二人で、帰りのバスで香林坊を降りて、よく行く店に行く。
寮の近くの居酒屋が香林坊に引っ越した店。金沢大学の学生がよく出入りしていたが、同じ顔ぶれがいた。

その店を出て、一月前に行った大和の隣のスナック行く。前回の空約束を忘れていたが、彼女は憶えていた。
数日前に友人の車でドライブをしていた姿を見たそうだ。 もちろん冗談だろうが、
「今度私をドライブで東尋坊に連れてって!」と、誘われる。「今度な!」というと、「お願いします!」で、終わり。
前回の「期待を持たせる!」という二人の会話が下地にあることと、「スナックの言葉のお遊び」を島さんは知らないようだ。

彼女が席を離れて隙に「どうしたの〜?」
「おれ生まれて一度も女性に誘われたことがないのに!」種は明かさなかった。
彼女達は約束をしても絶対来ないし、言葉遊びをしているから面白のだ。 島さんは、まだ純朴だ。

帰りに会社の(他店だが)知り合いの女性にであう。
寮の近くに、「茶道」を習いに行っているが、そこを紹介してくれた人だ。
何かお礼をと思っていたので、スナックに誘う。夜見ると、なかなか濃艶な近づきがたい雰囲気が漂っている。
助平根性が出そうになるが、あとが面倒だ。 今夜は島さんと大人しく帰る。

帰り道、島さん曰く「こんな楽しい夜は初めてだ。なんで〜?」 「場数、場数!」とはいったが、実際面白い夜だった。
最悪の職場環境の立場ほど、反面おもろいことが多い。 人生で一番辛い?時ほど。

この会社は西友の子会社化になっているが、社員は惨めだ。とにかく会社は強者の立場に置いておかなくては。
人生は弱者の立場に立ってはならないことを痛感する。  明日は「売り出し」で忙しい!

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