2005年06月05日(日)
1524, わたしの酒中日記−3
   金沢編−1

ー1971年10月某日
会社の寮から50?のところに「トラちゃん」というホルモン焼屋がある。
まわりカウンターの中で、小太りのトラちゃんというに相応しい小母ちゃんがやっている店である。
この店には月に1~2度位、ブラリ入る。寮に近いわりには、会社関係の人はこない。
香林坊には、いくらでも面白そうな店があるので、こんなところでは飲まないし、
彼女が大体いるためか、一人で飲む奴などいない。

香林坊からバスで10分のところにあるが、何時ものようにモツの炒め物を注文して一人飲んでいると、
寮の2年先輩が嬉しそうな顔をして入ってきた。「おお一人か!実をいうと、今日は競馬で大穴を当てたんだ。
一杯奢るから俺について来な!」断る理由など一切無し、タクシーで香林坊の少し路地に入った店に乗りつけた。
看板には「平家 落人焼き」とある。店に入ってビックリした。油で店の中が黒光りしてギトギトである。
威勢のよい40歳がらみの親父と、女将が愛想良くむかえてくれた。
カウンターの中に大きな1m四方の鉄板に、魚や肉を野菜と一緒に焼いて出してくれる。

メニューは鉄板焼きだけのシンプルなメニューだけである。
ツマミは、手で千切ったキャベツが大きなバケツから手掴みで、皿に入れられて出される。
それを食塩を振りかけて前菜にする。平家の落人が、山に隠れて兜を逆さました中で、山菜や猪の肉などを
焼いて食べていたという由来から名づけたのだろう。

ここの名物は何といっても「夫婦喧嘩」とタクシーの中で聞いていた。 ストレスの溜まったオカアチャンが、
いい加減なオトウチャンに切れる。見ていても迫力があるという。そして何時もの通りに夫婦喧嘩が始まった。
両親の赤裸々な夫婦喧嘩もなかったので、その夫婦の迫力に驚いてしまった。
しかし、一戦が終わった後は何事も無かったように穏やかになった。
オカアチャンが休みの日など、一人しょんぼりとしているという。

その親爺が、今度は会社の先輩の絡み始めた。
「お客さんには悪いけど、今日は最高の日のように見えるが、実際は最悪の日なんだよ!
博打で当たった味が結局は深みにはまり込むんだ。その意味で今日は最悪の日だよ!気の毒になー!」
聞いていてイヤに納得のいく言葉であった。

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