つれづれに

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白頭鷲アメリカのシンボルだったが?


 *各新聞の一面下にあるコラムが面白い!
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天声人語 (朝日新聞

 「驕(おご)れる者は久しからず」は古来不変のことわりだが、
豊臣秀吉は「驕らずとても久しからず」と、皮肉めかして世の常を言い表したと伝えられる。
米国の金融業界がどちらだったかは知らない。いずれにせよ、複雑な「錬金術」にかまけた果ての、
大証券会社の破綻(はたん)である
リーマン・ブラザーズの負債総額は実に60兆円を超え、過去最大の破綻になった。
 他の金融大手への連鎖も心配されている。「フー イズ ネクスト(次はどこだ)?」と、
 ニューヨークの金融街などは戦々恐々らしい
▼業界は90年代から、グローバル化に乗って新たな金融商品を次々に作った。
 そこへ、世界中で余っているカネが流れ込んだ。巨万の富を生み「わが世の春」を謳(うた)っていたが、
 商品の一つのサブプライムローンでつまずいた
▼先行きへの不安から、米国内には「暗黒の木曜日」になぞらえる声も起きているという。 
 1929年のその日、大恐慌の引き金になった株暴落が始まった。
 このときも「金ぴか時代」と言われた空前の繁栄から、坂道を転がっていった
▼東洋的な無常観とは無縁だったか、当時のフーバー大統領は永遠の繁栄を国民に約束していた。
「どの家にも2台の車を」を標語に選挙に勝った。
 だが失業者があふれ、期待は恨みに取って代わられた
▼今、米国に引きずられるように世界経済は変調を来している。
 専門家によれば、このうえドルが暴落するのが最悪のシナリオらしい。
 株や投資に熱心な向きはなおのこと、対岸の火事を決め込める状況では、もうないようである。

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春秋(日経新聞)(9/17)

 地獄に下りてきた1本の糸。天上へと続く救いの道は、銀色に輝く蜘蛛(くも)の糸だった。
芥川龍之介の短編小説「蜘蛛の糸」では、その糸が途中で切れ、主人公は再び地獄に転落する。
窮地にあって、外の助けを借りて救済されるか否か、の分かれ目は何だろう。

▼小説で蜘蛛の糸を垂らしたお釈迦(しゃか)様は、同じ糸に連なって登ってくる他の罪人をののしる主人公に、
 慈悲の欠落を見ている。破綻した米国4位の証券大手リーマン・ブラザーズの問題点を、救済対象を同3位の
 メリルリンチに変えたバンク・オブ・アメリカのCEOは、「グリード(貪欲(どんよく))」と言い切っている。
▼資本市場ではいつから貪欲が罪になったのだろう。ハイリターンを求めて、世界を席巻する米投資銀行のビジネスモデルが、
 今や負のイメージだ。リーマンと同じ蜘蛛の糸には、世界の「グリード」が無数つかまっていた。
 髪の毛の1万分の1という蜘蛛の糸に、頼りすぎたのかもしれない。
▼米金融界の今は、バブル崩壊時の日本金融界と見事に重なる。大和証券住友銀行の系列入りして態勢を立て直し、
 山一証券は破綻した。そっくり同じ構図でメリルリンチをバンカメが買収し、リーマンは破綻した。
 デジャ・ビュ(既視感)そのもの。日本のバブル崩壊について、米国は真剣に学ぶときだろう。

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産経抄】(産経新聞) 9月17日

 世間の評判があてにならないのはわかっているつもりだったが、彼ほど虚像が膨らんだ経営者をほかに知らない。
 経営破綻(はたん)したリーマン・ブラザーズを長年にわたって率いてきたリチャード・ファルド最高経営責任者
(CEO)のことだ。
 ▼攻めの経営で「世界で最も尊敬されるCEO」(バロンズ誌)に選ばれ、リーマンも「最も称賛に値する米証券会社」
 (フォーチュン誌)に輝いた。どちらも昨年の話である。
 そんな立派な会社の尊敬されるトップが、世界同時株安を招いた一大事にちっとも表に出てこない。
 ▼かつて山一証券が廃業に追い込まれたとき、社長は記者会見で突然立ち上がり、
 「社員は悪くありませんから!」と大泣きした。ずいぶんと格好の悪い姿だったが、
 そのおかげで救われた社員も少なくなかったという。
 ▼夜逃げ同然に段ボール箱に私物を入れ、オフィスから立ち去らざるを得なくなった二万数千人の従業員に
 かける言葉はなかったのか。むろん、世界の人々を恐慌の瀬戸際に立たせたことへの一片の謝罪もない。
 これでは「世界最低CEO」の称号を与えるしかない。
 ▼ブッシュ米大統領は「経済全体への悪影響を最小限にとどめられるよう取り組む」と語ったが、
 どこかの首相のように人ごとに聞こえる。諸悪の根源といえるサブプライムローンを放置してきた
 責任を感じているようにはとても見えない。
▼日本も対岸の火事では済まされない。きのう、日経平均株価は600円以上も急落した。北朝鮮情勢も心配だ。
 一刻も早く新政権を立ち上げ、緊急事態に備えねばならないのに、だらだらと自民党総裁選を続けていていいのか。
 野球には、コールドゲームというルールがある。政治空白を危機は待ってはくれない。