2005年11月01日(火)

1673, うそつき −1              ー 読書日記
  「うそつき」 ―うそと自己欺まんの心理学  
                  チャールズ・V. フォード (著) 
この本は面白い!自分の心理の底奥深く食いこんでくる。
「人は誰しもうそをつく」という解りきったことを、あらためて突きつけられると、ひるんでしまう。それほど、
「うそ」は誰も扱いがむずかしいテーマである。 実際、夫婦でも友人でも「うそ」を上手に織り込んでいないと、
その関係は崩壊してしまう。要は真実を語り、その中に適当にうそを織り込むからこそ人間関係は上手くいく。
「うその基本的技法は相手の聞きたがっていることを語ることである」という言葉に、結婚詐欺師と宝石屋の営業マンが思い浮ぶ。
ただ、相手のシンデレラ・コンプレックスを満たしてくれる王子様を演じればよいのだ。
餌は、理想的な結婚と宝石という石ころである。私は、可能限りうそは言わないことをモットーとしてきた。
この本を読みながら、「うそを言わないことで多くの他人を傷つけてきたのではないか?」という疑念が出てきている。
 ー以下は、本書の概要であるー
精神科医である著者はあらゆる角度から「うそ」の実体を探りだそうとする。
哲学的にも含蓄に富んだ書物である。うそはよくないと知りつつ誰もがうそをつく。
儀礼的なうそから病的なうそまで、心理学・脳科学・生理学などで検証した「うそ学入門書」といえよう。
この本は、うそというものに対して道徳上の判断を持ち込んでいない。 うそは「人生の主要部分、
おそらくは中心部分をすらなすもの」で、それが善か悪かは、あくまで他者との関係において決定される。
うそを覚えるのは、人間の成長上重要なプロセスであり、対人関係を円滑に運ぶためにもうそが不可欠だという。
自負心や精神の平衡を保つには自己欺瞞(ぎまん)が必要で、多くのうつ病患者は、自分自身にうそをつくことが苦手だと。
その危険性についてもじっくり検証、慢性的にうそをつく子どもは将来犯罪に結びつきやすいとか、
うそつきには遺伝的傾向が見られるといった、深刻な研究結果も披露している。
われわれの生活は数えきれないほどのうそに囲まれている。そのひとつひとつが人間を知る手がかりなのだ。
友人や家族のうそを責める前に、もう一度相手のことを見つめなおしてみるとよい。
ー自分の心は自己欺瞞で成り立っているかもしれない。 だから狂わないでいられる?
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人間においては「うそ」は普遍的に見られる行動である。 そして、ある一定の自己欺瞞は健康な精神状態を保つためには 
むしろ必要なものであるという、あまり認めたくないような現実がある。一読して深く考えさせられる見解が多い。
「過去の記憶」が多分に誘導で変わる危険性がある、という指摘が鋭い。
次回には、この本の印象的・刺激的な文章を抜粋してみる。          
                       ー つづく
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