人類の現時点を俯瞰してみると、人間圏が限界に達してしまったことと、
  インターネットという人類文明史にとって大きな情報手段を手に入れた、という大きな分岐点に立っている。
  著者はアポロの月面着陸が地球史・生命史という時間スケールでも、特記すべきことと見ている。
  4億年前に、生命が初めて海から陸に進出した事件に匹敵するという。
  現代は宇宙から地球をみなければならない時代になってしまったのである。
  グーグルアースも、地球だけでなく天体飛行のできる機能がついている。
  我々は何時の間にか、その立ち位置に置かれてしまったのである。
   ー以下、要点を抜粋したー
 〜〜〜
「地球システムの崩壊」 松井孝典著         −読書日記   −2
  *現代とはいかなるじだいか

1969年、人類は地球上の生命としては初めて、地球の重力圏を突破し、月面にその足跡を印した。
人類としての記念すぺき最初の一歩を印したアームストロング船長は、
 その歴史的瞬間に立ち会った気持ちを、次のように述べている。
   「これは一人の人間としてはほんの小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である」。
この言葉ほど、現代という時代の特徴を、簡潔にして明瞭に伝えるものはない。
 アメリカの文豪ノーマン・メイラーもまた、この高揚した時代の気分を次のように残している。
「二〇世紀はアポロー1号の打上げをもって終った」。
それは地球史、生命史という時間スケールでも、特記すべき事件である。
今から四億年前、生命が初めて海から陸に進出した事件に匹敵するからだ。
 地球の重力圏を突破することの哲学的意味は、宇宙から地球を見る視点を獲得することにある。
それは地球が、他の太陽系天体と同じくひとつの天体にすぎないことを、一般の人にも、画像としてはっきりと
確認させてくれるが、しかし一方で、地球が他の太陽系天体と、異なる天体であることも認識させてくれる。
 その雲の変化や、季節による大陸の地表変化は、大気と海との複雑な相互作胆あるいは生物圏の存在を示唆し、
地表が、その領域を構成するいくつかの構成要素間の、相互作用による動的な平衡状態にあることを語っている。
専門的な言い方をすれば、それは地球がひとつのシステムであるということだ。
 また、夜になると地表を覆う光の海は、この天体に、高度に発達した知的生命体、
あるいは文明が存在することを、灯台からのシグナルのように宇宙に向かって発信している。
  従って、「現代とはいかなる時代か」と問われれば、
「我々の存在が宇宙から見える時代、あるいは我々が宇宙を認識しはじめた時代」といっていいだろう。 
それはまた、我々が大脳皮質に外界を投影し、内部モデルを構築するーそれが認識ということだが、
その認識の時空を拡大することで、ギリシャ以来の学問のゴールである普遍性について、
具体的に語りはじめた時代といってもよい。宇宙からの視点を得るとは、俯瞰的、相対的、普遍的視点をもつ
ということと同じである。 その結果、「我々は初めて、我々とは何か、どこから来てどこへ行くのか」、
  という根源的な問いに真正面から向き合うことができる。
その詳細を議論するには、宇宙や地球や文明について、いくつか基本的な認識を確認しておかなくてはならない。
   〜〜
   何度も書くが、これはコペルニクス的な人間観の転換でもある。また、その視点が最重要になる。
   月面着陸が地球史的にみて、これほど大きな出来事だったとは知らなかった。
   そして宇宙の彼方から地球を改めてみた時に地球システムの中に、自然の中に
   人間という知的生物がいて、生物を支配しているのである。
   それだけでなく、自らを創りあげた地球システムを破壊始めたのである。
   それが自滅とわかっていても自分自身どうすることも出来ない事態に入ってしまっている。
   この知的生物とやらは、知を得たがゆえに消滅していくのである。
   正しく「アダムとイブが禁断のりんご食べたこと」が、これに当たるのだろう。

・・・・・・・・・