ー三十年ぶりの、今東光の毒舌ー

順不順で書くと、{第6章 人生の価値、人生の意味ー なにはなくともこの糞坊主ー今東光
が面白い。 久しぶりに今東光の毒舌にお目にかかった。30年近くも経つだろう。

まずは、その部分ー
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 人生なんて、そんなにむずかしいものか。じつにさまざまな考えがあって少々、食傷気味である。もしかしたら、
人生論が人生をむずかしくしているのではないか。たしかに人生には山があり谷がある。悲喜こもごもである。
だが結局、生まれて、生きて、ただ死ぬだけのことではないか。どう生きるかは、それぞれの計らいでいいではないか。
ここまで見てきたさまざまな人生論はあまりにも近寄りがたいし、荒唐無稽すぎるし、立派すぎる。
もっとスカッとしたものはないのか、とお嘆きのあなた、これがあるのだ。
 その男が生存中は、なんだこの濁声の坊主は、と多少の反感を持っていた。
が、わたしはいまでは今東光を尊敬している。 そう、今東光和尚である。 聞いていただこう。
 〜〜〜
*「正しい人生」とか「何とかの人生」なんてものはないよ。本人にとっての人生しかないんでね。
自分にとっての人生しかないんだ。おめえが十八なら、「十八の人生」というものしかないよ。
それしか、オレは言いようがないね。(略)だから、自分にとっての人生で、自分が、これが正しいと思って闘って、
勝つか負けるか、これだけだよ、人生なんて。              ──『毒舌身の上相談』集英社文庫
 ー
*「バカ正直だと損をする。もっとずるく悪賢く立ち回れ」なんてよく人が言うけど、その言っている野郎が、
ずるく悪賢く立ち回って成功しているかっていうと、絶対にそうじゃねえんだな。 そんなのはダメなんで、
真実火の玉になって人生を渡っていって、社会にぶつかっていくんじゃなけりゃあダメだよ。
人がよすぎて結構じゃねえか。そんなタワ言ぬかすような野郎なんぞ相手にするな! ──同書
 ー
*「人生始めたばかりでスランプに落ちたら、死ぬまでスランプだぜ、この馬鹿野郎!」
「おめえみてえな野郎は一生、女を本当に愛することができねえよ。女を捨てて自慢してるような野郎は、人間の屑もいいところだ」
「そんな夢みたいなこと考えてねえで、てめえのキンタマのフクロのシワでものばしてた方がよっぽどましだぜ、この野郎!」。
  ー                                     ──『極道辻説法』集英社
*二十三歳の学生が近所の中三の女学生の家に半年間、毎日毎日いたずら電話をかけた。
どうしても彼女に自分が好きだということを知ってもらいたい。おれはどうしたらいい?
 自首すべきだろうか、という質問に対する傑作回答
「 自首するより死んだ方がいい。悪いことは言わん。死にな。二十三歳にもなってそんな電話かけたりするバカなら、
自首するより死んだ方がいい。自首すりゃあ、恥をかくからね。恥かくより死んだ方がいいよ。 切に自殺をお勧めいたします。
                                        ──『毒舌身の上相談』
  〜〜〜
後記)「死にな」がいい。「悪いことは言わん」。「お勧めいたします」がいい。
   現在、これだけのことを言ったら「馬鹿ども」に袋叩きにあうだろう。
   だから誰も、こういうことはいえない。だから懐かしいのである。
   今東光が現在の若者、特に負け組みといっている連中。
   私が今東光に変わって言ったとしたら、こうなるだろう。
   「この馬鹿野郎が!何が負け組みだ。そうしたのは御前自身だろう。何が格差社会じゃい笑わすな。
    手前に能がないのさえ自覚しないから、能がないままにしてきたのだろう。 知恵を使え知恵を。
    その程度のことは幼児でも使っているじゃねえか、馬鹿野郎。 知恵が無いとぬかすなら、足と手を倍以上使え。
    御前に覚悟も知恵も無いことを自覚もしてねえで、何が格差だよ。いいじゃねか、格差も。
    もし、格差をつけられたと思っている連中、あんなものゴミみたいなものじゃ。御前よりはマシぐらいだよ。
    そんなことより、知恵を使え知恵を、この馬鹿が・・・」てな具合になるか。
                                 −つづく
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