2005年05月26日(木)
1514, 酒中日記

何げなく図書館で借りてきた「酒中日記」が面白い。「小説現代」に連載された『酒中日記』
のエッセイを集めたもの。出版年は2005年だが、各エッセイは昭和41年からのもの。
四十年前の酒飲みの交友であると同時に、文壇交遊録でもある。

ちょうど私が20代の頃で、東京、四日市、神戸、千葉、金沢、と転々としていた所々で、
うまい酒を飲みまくっていた頃である。 現在の私の年齢と同じ位の当時の作家達が、面白おかしく酒を飲んだ
生々しい日記だから、更にひきつけられる。30年〜40年前の日記が、昨夜のように感じられるのが良い。

さすがに作家の日記である。具体的に克明に、面白おかしく書いてある。
このように私も当時の酒中日記が書いてあったら、それぞれの懐かしさが
具体的に記憶に鮮明に残っただろうに、残念である。
「金沢などの当時の人間関係を織り込んだ酒場でのやりとり」
が書き残してあったら、私にとって絶品の内容になっただろう!
誰もが、酒で多くの気晴らしや、ほろ苦い出来事や、面白い記憶があるはずだ。

この本では、酒を通じての交友、華やかな祝い酒、酒乱とその翌日の後悔の時間、
大酔しての活躍状況、いくら飲んでも底なしの人物…… その他いろいろ、各種各様のタイプの
酒にまつわる話が次々と出てくる。吉行淳之介から、安岡章太郎瀬戸内晴美遠藤周作など、現代文学史に
出てきそうな人たちから、山田詠美吉村昭までの32人の作家によるエッセイだから、面白くないわけがない。
「某月某日」で始まる(酒を飲むこと)をテーマに、軽く書かれたが内容は生々しい。
「バーからバーへとはしごを続け、気が付くとパジャマで朝の新宿を歩いていた」とか、
作家同士、昼日中に相手の家に押しかけ、飲んでは人を呼び自分も出かけるという、
「作家」イメージが見事に再現されている味ある文章が続く。
「朝、家で起きてみると、やはり目の前に大きな鬱のクマがいた。しかたなく、また死んだフリをする。」など、
 酒飲みの何ともいえない心理を書いている作家もいる。

銀座に遊ぶ作家たちの賑(にぎ)やかな酒もいいが、京都逗留の水上勉の一人酒の話もよいものだ。
創作の疲れか、女性問題の悩みか、花見小路や先斗町をフラフラと飲み歩く姿が目に浮かぶようだ。
孤影悄然とした水上の一番輝いている姿だろう。  次に、具体的に彼らの文章を書き写してみたい。
                  ー つづく
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「酒中日記 」  中公文庫  吉行 淳之介著

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