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ともかく内容が異世界である。だから面白いのだが。
こういう人間のベース?の世界を、真っ只中の人物が書いているのだから、
一言一言が生々しく小説のようである。 特に性欲からくる人間的な本性がリアルである。
人間研究という面で、顕わで可愛いが、人間の一番、弱い側面でもある。
娼婦の後ろにヒモの存在が、あまりに悲しい。髪結いの亭主とか、似たような男は周辺に幾らでも居る。
「娼婦に殆どヒモが居る」というのは始めて知ったが。
こういう連中が都会には蠢いていて、鵜匠のように見えない糸を操っている。
次の内容を少し脚色を変えた物語が、今でも現在進行中なのである。。
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*娼婦はヒモがつくる
彼女たちの大部分は、田舎からパリにお手伝いの口を探しにやってくるのです。
当時 ジュロと呼ばれていたヒモは、金持ちのようにしゃれた身なりで、
彼女たちの到着を駅で待ち伏せしていました。
娘たちは小さなスーツケースを持って、ちょっと途方に暮れた様子で、プラットホームに
降り立ちます。手に雇い主の女主人の住所の書かれたメモを握りしめ、とまどっています。
男は何らかの口実を見つけて、娘たちに近づくのでした。
こうして、娼婦獲得のため、お定まりの小粋なラブストーリーが始まるのです。
「地下鉄はあそこですよ。でも、その前にコーヒーでも飲みませんか」
田舎の雌牛たちになれ親しんできた娘にとって、都会のざわめきはいらつきを覚えます。
カフェの中で初めて出会った男に自分の行く先を説明するのでした。
彼は驚いて 「へえ。君の行く先って、あの夫人のとこ,.」「あなたはその方のこと、ご存じなの?」
と、娘はさほど驚きもせずに尋ねます。
「もちろん、彼女を知らない人なんかいないよ。パリにはああいった女性主人というのは多いよ.
こう言っては何だけど、とても意地悪な女だよ」と、ジュロは大声で笑いながら、そして、
しばらくこの娘に考える時間を与えてから、保護者気取りで言うのです。
「お嬢さん、気をつけてな。マダムは頑固だけじゃなくって、金払いも悪いからな…」
「ええ、じゃあ……」と、娘は呆然とつぶやきます。実際、娘にとっての第一日は不運に始まりました。
この見えない罠に満ちた大都会に、彼女はおじけついてしまったのでした。
ジェロは、そんな娘の動揺を見すかすように、やさしく言うのです。
「でも考えがあるんだ。僕の母親がお手伝いを探してるんだ。彼女ってとても素晴らしい女性なんだ。
彼女の家でなら、うまくやっていけよ」
そしてランチタイムになりました。ヒモは、この不幸な娘を安心させるため、大衆的なレストランに誘い、
定食を上品そうに選び、ごく少量のワインを飲むことをすすめ、ちょっと人を小ばかにするような物腰と、
田舎娘にとって魅力的なパリなまりを使って、調子のいいことばかり言ってだますのでした。
それから充分「出来上がった」と感じ取ると、彼は母親役を演ずる手先の女の家に連れて行きました。
娘を女の家に住まわせ、ジュロは、母親役の女と二人三脚で、娘が自分自身に身も心もゆだねるように、
仕向けるのです。甘い香りの花束と恋のささやき。ドレスと靴のプレゼント。ヴァカンスはコート・ダジュール。
ホテルは娘が好みそうな清潔でおしゃれなところを選びます。
そして、ちょっとぜいたくなシャンデリアの下でのディナーで感激させるのです。
翌日は船でレラン島へ。そこで、を「君を愛してるよ」と、胸に手を当てながら告白するのです。
田舎出の娘は、こうした言葉にもうひとたまりもありません。
こんなやさしくて粋な男性にかつて一度も会ったことがないのですからー。
パリに戻れば娘は恋するあまり、ますます‘母親’に気に入られように家事の手伝いに励むのです。
さて、そうした後に、いよいよジェロの本領発揮です。涙まみれで、ヤクザにだまされた、事業に失敗した。・・・・・
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駅には、カラスという手合いが、屯している。ホステスの斡旋業で、一人引く抜くと何万円かになる。
クラブも、ある意味で、こういう女性の隙を捉えて間接的?売春をさせなければ
お客は何万も出して通わない?? その意味で、夜の世界は深く、危ない世界でもある。
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