『バーカウンターは人生の勉強机である』島地勝彦著
   * 『意識が稲妻、舌は蝸牛』なら持てるは!
 『プレーボーイ』元編集長で100万部の雑誌に育てあげ、集英社の社長を最後に、
10年前にリタイア、現在は新宿伊勢丹に2014年に『サロン・ド・シマジ』という
店を開いて現在に至っている。連載していた架空の雑誌の立ち飲みバーを現実に
開店させたもの。週末には本人が現にシェーカーを振っているというから幸せな
ことだ。 で、先日、図書館で、この本を見つけて借りてきたが面白い。
島地といえば、開高健とのジョークバトルが繰り広げられた名対談集、
『水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負』が面白かった。それをキッカケに
ブラック・ジョークを探し求めた時期があった。20年になろうか。

≪ マスターの流暢な説明を聞きながら、90歳の瀬戸内寂聴は20代の秘書に
 負けず杯を重ねた。すらすらウイスキーの蘊蓄を披露している最中に、突然、
瀬戸内さんが言った。「マスター、今夜はつまらないわよ。どうしてドモッテ
くれないの。あんたの吃音には色気があるんだから」
 そう、マスターは生来のドモリである。カ行とタ行に弱く、素敵なレトリック
が浮かんでも舌の上で音にならないで死んでいく。
その昔、同期の現作家がドモリで、初任給を懐にすし屋に行ったときのことだ。
2人ともトロが食べたいときに、「ト」が口から出てこない。
「おまえ頼んでくれと…」というと、「ええと、ええと…」と口ごもる。
「海老ですか?」と板前に言われ、海老を6匹も食べることになったそうだ。
マスターは、ドモリをカバーするため、幼いころからたくさんの言葉を学んだ。
「ためらう」を「逡巡」という言葉に置換えて話した。自然と語彙が増えたこと
からこそ、編集者としての仕事がこなせたのかもしれない。そんなマスターに
開高健さんが、『意識が稲妻、舌は蝸牛」という言葉を贈ってくれた。
「そういえば、瀬戸内さんが90歳で書き下ろした『月の輪草紙』を読返し、
驚いたことに清少納言の最初の夫がドモリだった。
「あれは私の創作です。どうしてもドモリにしたかったのです。明治生まれの
アナキスト大杉栄は女にもてました。それはドモリだった。『き、君のことが、
好きなんだ』なんて言われたら、女性の母性本能に直に火が付く。昭和初期の
‘編集の神様’と呼ばれた斎藤十一も、そしてあなたもドモルところが魅力的
なんです。男がペラペラ喋るのは軽薄にみえてなりません」 
聞いたか全国のドモリで悩んでいる紳士成年諸君、そういうことだ。今日から
自信を持って生きるんだ。コンプレックスを武器にした時こそ、人間が大人に
なった瞬間である。 ≫

▼ 「弱点を強みにかえる」というと、思い当たる節が幾つかある。
 ・話下手を逆手にとって、聞き役になる。そして褒める。複数の美人に何気
 なく三回褒め、後は距離をおく。意外なことに、美形を直接、褒められない
のが現実。その後は無関心に。中の上から上の女性は心の内で殆ど、絶世の
美人と確信している。逆にいえば、飢えた男どもの目線に敏感。だから、意識
した距離感が必要になる。何か何時の間にか、美人扱い管理の話になった。 
 で、この本も下ネタを含めて、なかなかな… これは次回か、次々回に!

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2015/11/06
浅田次郎の人生相談 ーうつ病で、死ぬことばかり考えています
          ー『世の中、それほど平等でない』浅田次郎
 このところ、中島義道西原理恵子、島地勝彦、上野千鶴子など、
各分野の人たちの人生相談を取り上げているが、それぞれの個性が面白い。
今度は図書館で、浅田次郎の‘最初で最後の人生相談’のタイトルに惹かれ
借りてきた。雑誌『プレーボーイ』の今東光などの人生相談の一連の作家の後
を引き継いだ相談、肩を並べるには?〜ランダムに目に付いたところから〜
  ● 質問: うつ病で、死ぬことばかり考えています
≪「先日、ヘルニアになり入院して、その後、自宅に戻って安静に過ごし、
心身の状態が回復してから今の職に復る予定でした。しかし、その間に、
好きだった草野球や水泳ができなくなり、鬱屈したものがたまっていくなかで
妻とも些細なことでもめるようなってしまいました。精神不安定になり、
病院で『うつ病』の診断を下される事態はさらに悪くなり、最近では死とか
自殺とか、『どうしたら周囲に迷惑をかけずに死ねるか、などということ
ばかり考えています。現在は自宅療養中なので、経済的にも厳しくなってます。
今の職に復帰することは可能ですが、どうしてもそのような気持ちが起こり
ません。しかし一方で、こうして自宅で療養できるのも今の仕事で稼いだ
貯えがあるからなので、普通に考えれば辞めないで復帰したほうがいいと
いうこともわかっています≫
  ● 回答: まずは妻と仲良く! 
次郎: ひとつ思うのは、あなた、病気のせいにしてないか? もともと今の
 仕事に対して嫌なことがあって、病気がきっかけでそういうネガティブな
 気持ちが表層に出てきてしまった。それをすべでヘルニアのせいにして
 しまっている。それは‘ジョーカー’なんだよ。
「健康上の都合で」という力ードは、やたらめったら切るべきじゃないんだ。
 うつ病だって働かない理由にはならない。
太郎: お言葉ですが先生、うつ病というのは正しい治療の必要な、
 れっきとした病気ですよね。
次郎: もちろんそうだ。そうなんだけど、薬を飲めばそれで治るという
 ものでもないだろう。最後には、自分を奮い立たせる心の強さが要る。
 それがなければどんな良薬を使っても根本的な解決には導けない。
 そんなあなたに、特効薬になるであろう助言をひとつ。何よりもまず、
 奥さんと上手く、やりなさい。夫婦仲が上手くいってないなら、それが一番
 ダメージになる。だって会社に行って、どんなに嫌なヤツと顔を合わせて
 仕事をしなければならないとしてもせいぜい8時間、9時間くらいだろう?
 ところが残りの15、16時間というのはほとんど女房が隣にいるわけだ。
 週末の休みを入れればもっとだよ。ある人とふたりきりの時間が一日の
 三分の二あるのに、その人と上手くいっていないというのは、これは精神的
 にこたえるよ。会社でどんなに嫌なことがあっても「お帰りなさい」と
 言って飯の支度をしてくれて、愚痴も聞いてくれる女房がそこにいるから
 こそ、明日またがんばって働こうって気になるのよ。それなの女房と
 上手くいってなかったら24時間嫌なことだらけじゃないか。まずは女房と
 セックスをし、どうせ仕事を休んでいるんだったら割り切って旅行でもし、
 夫婦関係を取り戻しなさい。ヘルニアを治すよりよほど効果があるよ。
 自分に近い人から大切にしていくというのが、良い人生を歩むための鉄則。
 男ならまずは女房、子供。ぞれができたらひとつ先、親や兄弟を大切に
 するんだ。≫
▼ 各分野の先生?の、人生相談の相談を読んで、まず私なら、どう答えるか、
 一度、自問自答するのが面白く読むコツ。一歩間違えれば、離婚、家族離散、
など、最悪な事態が口をあけて待っている。 私なら、
<徹底して、その最悪の事態を徹底的に想定する。そのうちに、凍り付き、
その解凍と同じに、会社にいくとか、ステップを踏み出す。隠れた野性は、
その究極の中から顔を出す。> 『出てこない?』なら、保険を充分かけ?
サッサと死んでしまうがよい。それも出来ない? まずは、死に場所を探し、
彷徨ってみれば?いざ死ぬとなると、ゾッとする。しなかったら、そのまま
逝けば!死ぬ覚悟のない奴に、生きる覚悟があろうはずはない!>
 その前に図書館か、大型書店を彷徨ってみなさいよ!
苦しさに合わせ、妖精が、その本の場所に導いてくれるはず。                

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2015/10/22
島地勝彦の〜柴錬、今東光、開高、乗り移り人生相談〜 ー?
  元・プレーボーイ編集長の島地に、亡くなった三人がのり移った設定の
人生相談だから、面白くないわけがない。ランダムだが、面白そうな相談から
紹介していく。
   ー大企業で出世する男の見分け方を教えてくださいー
〈 私がつき合っている男性は慶応大学卒の28歳、某大手電機メーカー勤務です。
有名企業ですが、このご時世、サラリーマンの一寸先は闇。彼が出世競争を勝ち
抜ける人かどうかを知りたいのです。私も大手といわれる保険会社勤務ですが、
ずっと仕事を続けるつもりはありません。というか、専業主嫁になりたいです。
ただし、貧乏臭い節約生活は送りたくありません。銀座で気軽にショッピングを
したり、一流のレストランでランチができるくらいの余裕のある生活が希望です。
そのためには、旦那さまにかなりの稼ぎがないことには。かといって、ベンチャー
経営者なんていうのは、倒産の危険と背中合わせで不安定だからイヤ。大企業で
出世する人がいいのです。そういう人の共通点って何でしょうか。どんなところ
で見分けられるでしょうか。こんな質問をしたら、コメントは欄では非難轟々
かもしれませんが、本音でお蜀きします。(27才女性) 〉
  ーお答えー
〈・シマジ:その慶応卒の彼氏とやらに会って、食事をしながら二時間も話せば、
出世するかどうかをぴったりいい当ててあげるよ。だが、一般論として出世
するす男はこうだとはいい難いな。それこそ千差万別だ。だから、会わずに
語るのは無責任だな。無責任だが、これだけはいえる。この男が大企業の中での
競争を勝ち抜き出世するだけの知力と感性の持ち主なら、相談者を一生の伴侶
として選びはしない。すなわち、相談者を妻にするような男なら出世の見込みは
薄く、出世する男なら、いずれ相談者と別れるだろう。
・アソシエ:辛口ですね。
・シマジ:相談者の本音の質問を本音で答えたまでだよ。出世をする人間の
大事な条件の一つが人を見る眼力だ。大きな組織の中でこれぞという先輩や
上司を探り当て、その人に教えを請い、その人を尊敬して命がけでついていく。
あるいは営業マンなら、取引先のキーパーソソを見極め、そこにしっかりと
食い込み、人脈を広げていく。いずれにせよ、そうした人を見る眼力があれば、
女のたくらみも見通してしまうだろう。それにしても、相談者の考えは浅いな。
だってそうだろう。日本の大企業の中で課長に出世をする男には眼力が必要だ。
課長になり、部長になり、ついには役員になったとして、どれほどの生活が
できるというんだ。第一、子供はどうする。子供が二人もできたら、優雅に
お買物にラソチになんていっていられなくなる。しかも、教育に金がかかる。
こういう相談者だから、子供に有名幼稚園や小学校をお受験させるだろう。
そのうえで、有閑マダムよろしくブランド品のショッピングに精を出し、
高級レス.トランでランチ三昧なんてことをしようとしたら、数千万の可処分
所得が必要になる。ということは旦那は税込みで一億円近く稼がなくては
ならず、サラリーマンには到底無理な話だ。〉
▼ 以前、田圃や小川に生息する〈タガメ〉について書いた。蛙や、小魚に
 抱きつき、栄養分を死ぬまだで吸い取る昆虫で、日本の専業主婦に酷似
しているという分析の書籍を、ここで紹介した。 何か、誰かさんみたい?
  〜二年前に取り上げた内容を下にコピー〜

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2015/10/23
島地勝彦の〜柴錬、今東光、開高、乗り移り人生相談〜 ー?
    ー結婚しなさい。いい相手を俺が紹介してあげようー
 私に今東光が乗移ったら、『サッサと転職をしろよ。次の職場で後悔する
状況に直ぐに陥るから、少しはマトモになるはずじゃ!』というだろうに!
 ≪ ◎ 質問: 信念や主張がなく、すぐ諦める自分がもどかしい
〈 私の悩みは「こだわり」がないことです。そのためか、人にただ流される
 生活をしているような気がします。仕事をするうえでも、周りの人が
「こうするべきだ!」と強く出してくると、「だったらそ札でいいんじゃない」
と迎合しがちで、会議などでもあまり意見はいいません。何かを強く主張を
して揉めるくらいなら、初めから諦めてしまうほうが面倒がなくていいと
思ってしまいます。人材開発・組織開発の仕事をしていますが、この仕事は
すぐ結果が出るような類のものではなく、周囲とのコンフリクトが当然の
ようにあります。それだけに、信念やこだわりがなく、すぐ諦めてしまう
自分がもどかしいです。三十歳を超えて、このままだと仕事は中途半端な
ままで終わりそう、と不安です。(三十歳女性) 〉
  ◎ 答え=人生で最大の罪悪は退屈すること
・シマジ: うーん、難しいな。俺とは全く違うタイプだ。何が原因で自己主張
を諦めるようになったか分からないが、相談者は人生に退屈をしているんじゃ
ないか。主張しない、迎合する、すぐ諦める。これではノッペリした平板な毎日
で退屈で仕方がないだろう。俺は人生で最大の罪悪は退屈をすることだと思うよ。
何だっていい。何か一つのことに十年ものめり込めば、間違いなく自分の世界が
できる。確固とした価値観や美意識が形作られ、オリジナルの主張や、譲れない
一線としうものが生まれる。すぐに諦めることもなくなると思うがな。
・アソシエ: 趣味に打ち込んでみたら変わりますかね。
・シマジ: 実のところ、「たしなむ」レベルではあまり変わらない。結局のところ
「道楽」でもまだ足りず本当は道を極めるところまで行かないと世界は作れない。
つまり「極道」まで行く必要があるんだが一まあ、そこまで要求するのも酷だから、
まずは何か打ち込めそうなものを探してみてはどうかね。空手なんかどうだ。
・アソシエ: いきなり空手ですか。 (略)・・・
・シマジ: 経済力があって頼れるいい男を見つけて結婚すれぽ、相談者は
昔ながらの良妻賢母になり、幸福な結婚生活が送れると思う。何も仕事で成功
するばかりが人生の幸福でほない。自分の意見を強く主張し、周囲と競い合って
仕事で成果を上げるということが向いていない人もいるんだ。そういう人は無理
をして仕事場で「できる女」を目指さなくてもいいと思う。
というわけで、相談者には旦那さん候補としてこ人の男性を紹介しよう。
じつは、いい人がいたら紹介してくれと二人の男から頼まれているんだ。
いま、その男たちの写真を持ってくるよ。
・アソシエ: まっと待って。それは人生相談の範疇を超えているような気が。
・シマジイ: どうしてだね。人生相談というのは相談者の悩みに真剣に対峙
 するものだろう。少なくともシバレン先生、今東光大僧正、開高健文豪は、
相談者に胸襟を開き、自らこれと信じるということを真剣に語った。
人生に正解なんてありはしないんだ。だから人生相談にも正解やあるべき姿
なんてない。語るだけでなく、人助けの実践的サポートまでやる人生相談が
あってもいいじゃないか。俺は、この相談者の幸福は結婚にあると思っている。
そして、良妻賢母になることを確信している。相談者に結婚する気がないなら
無視してくれれぽいいだけだ。もし、その気があるなら、連絡してくれ。≫
▼ こういう人は、男にもいる。学生時代など20歳半ば頃までは、
 経験の絶対量が少なく、まず周囲と同化することに神経がいって当然。
女性なら家庭に入ることで逃避する道があるが、男は、そうはいかない。
人生に正解はないとしても、より良い道は自分でしか切り開けない。
で、知恵を絞り出すしかない。この後の二人の対話が面白いが、止めておく。

・・・・・・
2015/10/24
島地勝彦の〜柴錬、今東光、開高、乗り移り人生相談〜 ー?
   一1人の時間を持て余す者は、二人の時間も持て余すー
 老いの大きな問題に『孤独』がある。特に独身の場合は大きな穴が
心の中にスッポリと開いているのだろう。そのためには、自分の世界を
つくり、ダンデゥズムに徹し、孤高に生きるのも人生の一つ。
≪ ◎ 質問 =このまま一人孤独に人生を終えたくはないのです…
 私はこの年になってもまだ結婚をしたことがない50歳の独身です。
仕事を離れるとほとんど人とおしゃべりする機会もありません。
飲みに行ってもほかの客とはあまりしゃべりません。
自分から心を開かなければ相手も私の心を分かってくれないということは
承知しています。会社もあと十年弱で定年ですし、その後の人生はこのまま
孤独に過ぎて、ある日部屋の中でひっそりと終わるのかと思うと不安です。
心を割った話ができる相手、できれば女性を見つけたいと思っています。
でもいままでにそのような出会いはありませんでした。
今後出会いはあるものでしょうか?、(五十歳男性) ≫
≪ ◎ 答え=孤独を孤高にまで高める生き方を目指せ
・シマジ: この前のように三十代の男性からの相談なら「書を捨てて
 女を口説け」、というところだが、五十代となるとそうともいえないな。
仕事以外ではほとんど人とおしゃべりをしない。飲みに行ってもほかの客とは
距離を保つ。おそらく、相談者はずっとそういう生き方をしてきたのだろうし、
他人に自分の領域を侵されるのが苦手で、一定の距離を保つほうが楽だった
のだろうだとしたら、この齢になっていきなり社交的になれといっても、
それは無理な相談。女性に対しても尻込みしてしまうタイプだろうな。
こういう人が人生の晩年を一緒にすごす女性を見つけようと焦ると、下手を
すると結婚詐欺に引っかかりかねない。だから、無理はしないほうがいいね
・シマジ: だからこそ、孤独を恐れる凡人を脱して、相談者には孤高を目指
してほしい。肌のぬくもりやおしゃべりの相手が欲しいなら、猫を飼えばいいん
じゃないか。猫はいいぞ、しみじみと会話ができるからな。俺の知合いの作家
の話だと、飼い猫をあんまり可愛がりすぎるものだから、結婚したばかりの妻が
怒ってね。、「猫と私とどっちが大事なの?」うていう言葉に「そりゃ猫だ」
と答えたものだから、新妻に家を出て行かれたそうだ。人間の女より、猫の
ほうが一緒に暮らしていて心穏やかでいられるというのは否定しがたいね。
・シマジ: 金と時間と情熱を注ぎこんだ一人の時間を豊かにするには、膨大
の情熱と知恵が必要だ。一人で孤独だと思うのではなく、誰にも邪魔されない
自由な時間をどれだけ豊かにしようかと真剣に考えるところから、人生の愉しみ
が広がっていくんだ。まさに人類のステキな時間。心の中に星が降る時間だね。
だから、相談者が仮に本やお酒に興味がないなら、別の手段でもいい。
自分が興味を持っているものをもっと深く探っていく気持ちを持てば一人の時間
を貴重に思えるんじやないかな。それにね一人の時間を愉しめる人でなければ、
二人の時間も愉しめないと思うんだよ。一人をエンジョイできる人間は、二人
になればますます相手と自分を愉しませられる。一人を持て余す人間は二人に
なってもやはり相手と自分を持て余して、退屈な時間を過ごすんじゃないかな。≫
▼ 家にオウム科最小のインコがいる。居間のガラス戸を隔てた先の籠に一匹、
 鎮座しているが、人恋しいため常にピーピーと呼びかけている。時どき、
餌を与えたり、頭を撫ぜてやるが、何か心が癒される。猫を飼うと、異性にも
関心が無くなり、ますます縁遠くなるというが・・ 

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2015/11/10
島地勝彦の〜柴錬、今東光、開高、乗り移り人生相談〜 ー?
  ●質問: 大企業で出世する男の見分け方を教えてください
≪ 今、私がつき合っている男性は慶応卒の二十八歳、某大手電機メーカー
 勤務です。有名企業ですが、このご時世、サラリーマンの一寸先は闇。
彼が出世競争を勝ち抜ける人かどうかを知りたいのです。私も大手といわれる
保険会社勤務ですが、ずっと仕事を続けるつもりはありません。というか、
専業主婦になりたいです。ただし、貧乏臭い節約生活は送りたくありません。
銀座で気軽にショッピングをしたり、一流のレストランでランチができる
くらいの余裕のある生活が希望です。そのためには、旦那さまにかなりの稼ぎ
がないことには…。かといって、ベンチャー経営者なんていうのは、倒産の
危険と背中合わせで不安定だからイヤ。大企業で出世する人がいいのです。
そういう人の共通点って何でしょう。どんなところで見分けられるでしょうか。
こんな質問をしたら、コメント欄は非難難々かもしれませんが、
本音でお聞きします。(二十七歳女性) ≫
  ●質問: 出世をする男には眼力が必要だ
≪・シマジ:その慶応卒の彼氏とやらに会って、食事をしながら二時間も話せば、
 出世するか、どうかをぴったりいい当ててあげるよ。だが、一般論として出世
する男はこうだとはいいきれないな。それこそ千差万別だ。だから、会わずに
語るのは無責任だな。無責任だが、これだけはいえる。この男が大企業の中での
競争を勝ち抜き出世するだけの知力と感性の持ち主なら、相談者の一生の伴侶
として選びはしない。すなわち、相談者を妻にするような男なら出世の見込みは
薄く、出世する男なら、いずれ相談者と別れるだろう。
・アソシエ: 辛口ですね。
・シマジ:相談者の本音の質問に、本音で答えたまでだよ。出世をする人間の
 大事な条件の一つが人を見る眼力だ。大きな組織の中でこれぞという先輩や
上司を探り当て、その人に教えを請い、その人を尊敬して命がけでついていく。
あるいは営業マンなら、取引先のキーパーソンを見極め、そこにしっかり食い
込み、人脈を広げていく。いずれにせよ、そうした人を見る眼力があれば、
女のたくらみも見通してしまうだろう。それにしても、相談者の考えは浅いな。
だってそうだろう。日本の大企業の中で課長になり部長になり、ついには役員
になったとして、どれほどの生活ができるというんだ。第一、子供はどうする。
子供が二人もできたら、優雅にお買い物にラソチになんていっていられなくなる。
しかも、教育に金がかかる。こういう相談者だから、子供に有名幼稚園や小学校
をお受験させるつもりだろう。そのうえで、有閑マダムよろしくブランド品の
ショッピングに精を出し、高級レストランでランチ三昧なんてことをしようと
したら、数千万円の可処分所得が必要になる。ということは旦那は税込みで
一億円近く稼がなくてはならず、サラリーマンには到底無理な話だ。
・アソシエ:以前、本物の江戸前寿司を体験しようというイベントで週末の
 昼に読者に集まってもらい、銀座の超有名店に行きました。我々はテーブル席
で四千円弱の『お決まり』をいただいたんですが、そのときに、カウンター席で
たぶん母と娘だと思いますが、五十代と思しき女性と女子大生っぽい二人連れが
「おまかせ」で食べていたんですよ。おまかせだとお酒抜きでも一人三万円は
する店で、明らかに常連客の様子から、そのあとは芝居見物でしょうか。
こういう人たちって本当にいるんだなと感心したのを思い出しました。
たしかに旦那が一憶稼がないと、あんな生活は無理でしょうね。
・シマジ: 俺が「週刊プレイボーイ」の編集長をしていたころだから、
 二十五年以上前の話になるが、俺の秘書兼事務を務める二十代の可愛い
女の子が「今、若い女性の憧れの結婚生活は、広尾のマンションに住み、
乳母車を押して有栖川公園を散歩し、明治屋で買い物する`ことです」と
いっていた。要する相談者のメンタリティは四半世紀前のOLと変わり
ないということだな。≫
▼ 以前書いた、蛙に取りき栄養分を吸取る昆虫の「タガメ」の典型。
 この女性、銀座でランチなど千円前後で可能で、ウインドウ・ショッピング
ならタダというのを知ってか知らずか。しかし、多からずの女性が持っている
本音である。この御時勢、一千万もあれば上クラス。「おまかせ」だろうが、
「お決まり」だろうが、大して変わりはしない。要するに、それはそれ。
確かに、旦那の稼ぎで妻の生活は変わってくる。収入が多ければ、子供を有名
私立に入学可能である。それもこれも、持って生まれた器量で決まってくる。
妄想を凝視し己を振返えれば、「つりあい」からして、その男が適当では。

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4660, 知る悲しみ ー『極道辻説法』は、シマゲジゴーストライター
2013年12月19日(木)
  * 今東光の『極道辻説法』は、シマゲジ作 
                ー『知る悲しみ』島地勝彦著
 図書館でみつけた島地勝彦著「知る悲しみ」。
例の『水の上を歩く? 酒場でジョーク』島地 勝彦・開高 健 (著)の、
元プレーボーイ編集長の島地の著書。「知らない悲しみより知る悲しみ
のほうが上質である」とは、言い得て妙だが、何と『極道辻説法』
の「和尚前白」は島地が東光に憑依して書いたと告白。生臭坊主の
名回答も、シマゲジの創作とは・・ ーその一節を書き出してみるー
・矢野「いまインターネットなどで『今東光語録』が箴言集のように
 扱われています。ところが私などから見ますと、どう考えても大僧正の
 興味のテリトリー外のテーマなどが書かれてありまして、ずばり
 訊きますが『和尚前白』は大憎正が書いたもの?
・島地「今日はすべて告白しよう。あれは全部オレが書いたものだよ。
 しかしよく分かったね。読み込んでいるなあ、矢野は」
・矢野「ただ『速記録』で実際に大僧正が語った回想や時評をうまく
 リライトされているのもあります。ですから島地さんの全くの創作ばかり
 とは言い切れない。今日は漢幸雄さんが収集した『和尚前白』を持参して
 きましたので、どれが完全に島地さんの創作なのか教えてくれませんか」
・島地「いいとも。(『和尚前白』を読み進めながら)第一回からオレの文章。
 確かに。うまいなあオレは。(国連総会演説を取上げた回を示し)これもオレ。
 高校野球の話、これもオレだ。この回は大僧正の話をまとめたもの。これも
 オレじゃないかな。ほんとに大僧正が愚依してるね。いま読んでも面白い!」
・矢野「スポーツや外国小説がテーマのものやアル・カポネの話もみんな
 島地さんの創作なんですね」
・島地「もちろん、そうだよ」
・矢野「このインタビューを読んでひっくり返る人、いっぱいいますよ。
 いま島地さんは『乗り移り人生相談』という連載をされていますが、
 まさに当時から大僧正に乗り移ってたことになりますから」
▼ 私もひっくり返った一人である。島地が今東光に憑依しないと、
 あれだけの名回答は出てこない。そうすると、この本の題名「知る悲しみ」
に通じてくる。「知らない悲しみより、知る悲しみの方が上質」としても、
読者の一人として、知らない方が良かったと思うのが人情。ここで紹介されて
いる「エロ・アーカイブ」は興奮した。飼犬の秋田犬と夫婦の3P?を生々しく
書いてあるが・・ 今度ここで紹介しようか?ー【スカトロ・マニア】犬の
ロッキーを恋人にした私の妻ーと検索すると出てくるが、お勧めはできない。
成るほど、「知る悲しみ」そのもの・・ 上質かどうかは別!