ー 「ジャズ完全入門!」 後藤雅洋著 ー ②
【 ジャスは「曲目ではなく演奏を聴く」と、もう一つ大切なポイント。それは「ジャズは、聴き手が音楽に寄り添わなければ楽しめない」
ということ。音楽を二通りに分けてみると、ポピュラーミュージックや歌謡曲のように、音楽のほうから「ね、聴いて聴いて」とばかり
優しく聴き手に寄り添ってきてくれるものと、クラシックやジャズのように、ある程度受け手の側が積極的に音楽を理解するよう努める
姿勢がないと、そのよさがわかりにくいものとがある。これは、聞いてもらってなんぼの商業音楽と、ちょっと嫌味なコトバだけど、
「芸術性」を持ってしまった音楽の違いであるといってもいいだろう。厳密に言えばジャズは大衆芸能から生まれたものなので、
その昔は「ゲイジュツ」というようなご大層なものではなかったのだが、ある時期から、やっているミュージシャンの思惑とは
関係なく(もちろん自覚していた人もいるけれども)、否応もなく芸術性を持ってしまったのだ。
 これは・国宝に指定された仏像のことなどを例にすると、わかりやすいだろう。 はるか昔、お寺の仏像は信仰の対象であり、
その作り手は自分が芸術家であるなんて思ってみなかったろう。しかし後世に、いつしか博物館に飾られるような美術的価値を
持ってしまうことがあるように、大衆芸能であったジャズが芸術性というややこしいものを背負ってしまったと考えていただきたい。
 そしてこの芸術性というようなものは、とうてい一口で説明できないけれど、少なくとも、世間に流通している商品のように
口当たりのよいものばかりでもなさそうだということは、ご理解いただけるだろう。有り体に言って、芸術とは、商業音楽のように
誰もが喜んで購入するような多数決の世界とは別の原理で出来ているものだし、結果としてTVのワイドショーのように「万人が理解できる」
といったものでもない。たとえばピカソの描くひしゃげた顔の絵を子供に見せれぱ「変だ」という答が返ってくるのが自然だし、
またそれが普通の感覚というものだろう。 ここに芸術と言われるものの不思議で難しい性格があるのだが、その核心部分は、あえて
曲がった顔を描いてしまうような芸術家の強烈な自己主張を、とりあえずは認めるところから始めなければ、捉えがたいものなのだ。 】
 ▼ ジャズの特性を、非常に分かりやすく噛み砕いてある。著者はジャズ喫茶を20歳で四谷でオープン、40年以上経過している。
  多くの著書を出し、その他にも講演や、ラジオなどで、ジャズの楽しさを伝えている。趣味と仕事を両立させた理想的生き方の一例。
  ジャズを愛する気持ちが、そのまま、文章から伝わってくる。ただジャズのフィーリングが好きと聴いているより、知識を入れ、
  聴くのとは雲泥の差が出来てくる。
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3382, 考えない・日本人
2010年06月29日(火)
911・考えない・日本人 」林 秀彦 (著)