昨夜、NHKで「のど自慢大会」があった。参加1万組の中から選ばれた15組というだけあって、
誰がチャンピオンになっても不思議ではないほど素晴らしい内容。
初めから最後まで涙が溢れた状態で聞いていた。 彼らの歌が一期一会のステージだからである。
ジェロ、北島三郎和田アキ子が、15人の歌が終わった後に歌ったが、彼らの歌に敵うわけがない。
土曜日のゴールデンタイムに歌えるチャンスは一生に一度、全てを、一曲にかけた魂の雄叫びに自然になっていた。 
盲目の少女がチャンピオンになったが、優勝をして貰った大きいトロフィーを北島三郎が代わりに持とうとするのを拒み、
最期まで重そうに抱えながら歌った場面が感動的であった。 あの重さは一生忘れることができないだろう。
恐らく専門家が15人それぞれにプロが歌と振り付けの指導をしたのだろうが、素人の初々しさに加味されて
何ともいえない雰囲気をかもし出していた。 

現在は、カラオケやスナックで素人がプロ並みになっているが、それにしても上手い。 
哲学的にいうと垂直に魂が入っている(一期一会・・永遠)のである。またNHKの演出も良かったのも見逃せない。 
それぞれの歌の背景にある人生劇場を浮出していた。歌は人生劇場を情念化した時空の世界で、歌っている間は、
その世界に我を忘れて没入しているのである。
現実だけでは人生は、あまりにも厳しく過酷である。別世界を持たないと人は生きることだ出来ない。
それが読書の世界であったり、酒の世界だったり、趣味の世界だったり、それぞれある。
「のど自慢」を哲学的に考えることもないが、情念の世界を無視することもない。

そういえば、月に1〜2度はスナックで、カラオケを歌うのが習慣になっている。
何で人は歌いたくなるのだろうか? それは物語を求めているからだろう。
物語を歌で辿っているのである。ミニ自己実現、そして、ささやかな宴ということだ。
また一年に一度の楽しみが増えた。 歳を重ね人生の深みが少しは見えてきたか!