ある時間の断片
12月31日  1968年

あと10分で1968年も終わる。 学生時代最後の年になる。今年を振り返ると、色いろなことがあった。
・三月下旬から2週間、石川君と一緒に、卒論の「流通革命」を書くために大阪の船場のメリヤス問屋に
 住み込みで流通の現状を見てきた。 生々しい旧来の世界と、そこに蠢く人間がいた。
・帰って直後に、欧州旅行の川崎と深井と松村と九州旅行に出かける。
 先ずは川崎の家に行って一泊をする。ところが川崎は事故がおきる予感がすると言って、急に旅行から降りた。
 三人で今度は名古屋の酒向の家に行く。家に泊めてもらって、その夜は高級中華料理店で最高級のご馳走だ。
 こんな美味しい中華料理は初めてであった。それから九州に行く。
 九州の鹿児島で聖心女子大のグループと落ち合う。1泊2日の薩摩の彼女等との旅行は一生忘れられないだろう。
・そして4月に父に「もしアメリカに行きたかったら、全ての費用を出してやるから留学をしてこい」と急に言われた。
 その気になったが、英会話に通うこと2ヶ月で、急ごしらえの留学は無理と断念をした。そこでの自己葛藤があった。
・またその時期に、石川に勧められて「武沢ゼミ」に入った。これは私にとって前の年の欧州旅行とともに大きな出来事だった。
・そして急遽ジャスコオカダヤと長崎屋を受験。両社とも合格する。ジャスコオカダヤに決める。
・夏休みは、卒論のための本を十数冊買い込み読む。 
 9月に二週間、10月に一週間、新潟県の六日町の禅寺の「雲洞庵」で、集中するために籠る。
・11・12月は、かなり頭を使いすぎたため不安定な時期になる。 
 去年に続き今年は、これからの人生での土台になる事があった。
 ーそう書いているうちに、あと三十秒で今年も終わろうとしている。
 ーーー
 ここより今年である。 1969年になった、学生から社会人の年になるのだ。
 今度は自分独りの力で生きていかなくてはならないのだ。頼れるのは自分だけである。
 人生は三つの戦いがある。自分、他人、そして自然との戦いだ。
 先ずは自分に打ち勝たなくてはなるまい。信念としての決意は「自分に打ち勝つこと」だ。