2004年07月29日(木)
1213,パスカル(2)
 −哲学についてー23

キリスト教の秘義とは、キリストが十字架にかけられ、苦痛の悲鳴の中で
悶え死んでいった不条理を解くことである。パスカルの信仰は、その苦痛で、底深く沈んでいったのだ。
「私を救ってください、助けてください、お願いします、お願いします、お願いします」
  この祈りが、キリストの苦痛と一緒になった時、秘義となるのだ。

先ほど書いたパンセの第一節「人間は一本の葦にすぎない。自然の中で一番弱いものだ。
だが、それは考える葦である」があるが、その先の文章がよい。
「これを押しつぶすには、全宇宙は何も武装する必要はない。
ひと吹きの蒸気、一滴の水でも、これを殺すに十分である。
しかし、宇宙が人間を押しつぶしても、人間はなお、殺すものより
尊いであろう。人間は、自分で死ぬこと、宇宙が自分が勝っていることを
知っているからである。宇宙はそんなことを何も知らない。
だから、わたしたちの尊厳のすべては、考えることのうちにある。

まさにここから、私たちは立ち上がらなくてはならないのであって、空間や時間からではない。
わたしたちには、それを満たすことができないのだから。だから、正しく考えるように勤めようでないか。
如何に生きるかの根底はそこになるのだから」
 パンセは学生時代、一言一言断片だが、心の奥に突き刺さるように響いた。

 ーパスカルの概略を書いてみると
フランスの思想家、数学者、物理学者。数学的確実性を信じ、懐疑論に反対。
のち宗教的回心を経てヤンセニズムに共鳴し、イエズス会による異端審問を批判。
思想的には現代実存主義の先駆とみなされる。
数学では、円錐曲線論・確率論を発表、物理学では、流体(液体・気体)
の圧力に関する法則「パスカルの原理」を発見。(一六二三〜六二)                
                        つづく
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