2004年06月06日(日)
1160, 「武士の家計簿」−2

いまの時代にタイミングよく出版された、時の書といってよい。
現在の日本は、第二次大戦の終戦時や、江戸末期から明治維新の時期より大きい
大転換期にある。
この時期に江戸末期の武士がどのような暮らし向きをしていたのか、
どう対処していったかが、彼らの家計簿から大きなヒントを得ることができる。
彼ら猪山家の人たちが語りかけてくる言葉から「過去の人との対話」が可能になる。

「あとがき」の最後の文章が印象的である。

ー大きな社会変動期には「いまある組織の外に出ても、必要な技術や能力をもっているか」
が死活を分ける。家柄を誇った士族達の大部分は、その時点で社会から外れていったのだ。
現状を嘆くより、自分の現行を嘆いて、社会に役立つ技術を身につけようとした士族には、
未来が来たのである。私は歴史家として、激動を生きたこの家族の物語を書き終えて、
自分にも、このことだけは確信をもって静かにいえる。
まっとうなことをすれば、よいのである・・・・・。
ーー
転換期にある日本人にとって、いや自分にとって、この作家の努力によって
彼ら猪山家の人たちより「深いメッセージ」を与えられたといってよい。
「まっとうなことは、一日一日の努力の積み重ねしかない。」
いま問題になっているのは、個人的にも国家的にも、過去のまっとうでなかった
(バブル狂奔)シワ寄せである。それを一つずつ引っ張り上げて、将来の姿を想定して、
まっとうな姿に変えていくしか方法はない。
 ー
武士の家計簿」 磯田道史著  新潮社
      長岡中央図書館  2004年05月29日
 目次
第1章 加賀百万石の算盤係
第2章 猪山家の経済状態
第3章 武士の子ども時代

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