つれづれに

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 はや3月になったが、昨日今日と天気が良い。結果的に今年は暖冬であった。
 天候とは逆に今月末から経済が大荒れになるから、月替わりは不気味になる。
 
 この歴史に残る大事件、他人ごとと割り切れば、これだけ面白い題材はないが、 そうはいかない。

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 【日曜経済講座】               産経新聞
「神の見えざる手」が破壊された世界 
                         編集委員・田村秀男


 ■リアルマネー動員の時
 ≪経済史上未曾有の危機≫
 強欲なヒトの手による市場原理至上主義は、「神の見えざる手」と呼ばれる節度ある自由市場原理を破壊した。市場機能が死んだから、バブル崩壊後の処理ができない。世界金融危機は100年に1度どころか、経済史上未曾有であり、従来の経済理論は役立たない。
 震源地の米国は無限大ともいえる速度で巨大な新型「マネー」を創造した。その規模は2007年末時点で、実に米国と欧州の国内総生産(GDP)合計額を上回っていた。
 今やこのマネーの大半が使い物にならない。2007年夏の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)危機に始まり、08年9月の「リーマン・ショック」で一挙に広がったバブル崩壊である。
 人々の欲望を満たすかと思うと、突然地獄に突き落とすマネーの正体は何か。この本質がわかれば、金融危機のナゾは解ける。
 現代のおカネは財布や預金口座の中にあるだけではない。金や銀との交換が保証されていた金銀本位制の時代と違って、現代のおカネはモノ・サービスや資産を買うことが国によって保証された紙切れだ。ならば企業が株式を、国は国債を発行することは、日銀がお札を刷るのと同じ。証券類もマネーの一種なのだ。
 ≪仮想現実空間で創造され≫
 米国はとめどなく生まれる資産を証券に変えた。金融機関による各種の住宅ローンなどローン債権である。ろくに働かないXさん向けのローンをそのまま証券にしても焦げ付いてしまう恐れがある。そこで不特定多数のローンを切り刻み、混ぜ合わせて再合成してさまざまな構成要素からなる証券にしてしまえば、Xさん関連部分は薄まり、リスクがほとんどなくなる。何よりも全般的に住宅ブームで担保価値が上がっているという前提がある限り、証券価値も上昇する。すると、低リスク・高収益の証券になる。

 それでも証券が焦げ付いたら、発行機関に代わって元利払いに応じる。この保険商品は金融派生商品デリバティブ)の一種「CDS」と呼ばれる。リスクがほとんどない。ならば投資規模を借金で膨らませればもっともうかる。低金利のドルばかりでなく、海外、特にゼロ金利の日本から円を調達してドルに転換し、自己資金の何十倍も投資すれば、投資収益率は何十倍にすることも可能だ。この手法は「レバレッジ(てこ)」と呼ばれる錬金術だ。
 壮大な一連の作業はIT(情報技術)により、金融工学のソフトを使えばパソコン上で簡単にこなせる。取引は電子情報を帳簿間でやりとりするだけで済む。
 かくして米GDPの2倍以上ものマネーが仮想現実空間で創造された。米国の消費者は容易に借金でき、好きなモノを買える。中国は輸出主導で世界の工場として2ケタの高度成長を続け、日本も自動車や家電など輸出産業が生産規模を拡大してきた。
 グラフは、中国の輸出や日本車の生産規模が、米国の経済成長率を大きくしのぐ金融商品の伸びに同調して膨張してきたことを示す。金融バブル崩壊と同時に、売り上げや生産は奈落に落ちる。
 住宅バブルの崩壊が始まった途端に、証券化商品は一瞬にして価値が消えた。証券化商品は株や不動産のような資産とは違い実体がない。低リスクという信用が消えると、金融商品やローンは際限なく価値が失われていく悪循環にはまった。世界の工場までものみ込む「巨大津波」が発生した。
 1990年代の日本のバブル崩壊は株や不動産で、10年かかったが不良資産処理はできた。だが、米金融バブル崩壊は巨大な迷宮の中で進行し、出口が見えない。清算のメドが立たない。

 ≪「円」の信用力を利用せよ≫
 どうすればよいのか。オバマ政権は大規模な財政支出による8000億ドル級の景気刺激策を打ち出したが、消えた購買力は少なくても数兆ドルで、日を追うごとに増えている。米国は自力では再建できない。リアル(本物の)マネー、つまり現金や預金を持つ国が、リアルマネーを動員するしかない。その国とは日本、中国をはじめとする黒字のアジアである。
 日本が先頭に立って「円」の信用力を利用して、政府や中央銀行がマネーを大量発行する。さらに米国の不良債権処理や景気刺激策の財源に充当することも必要だ。本紙が1月から提唱してきた「政府紙幣の発行」「相続税免除条件付き無利子国債の発行」「円建て米国債の引き受け」の狙いである。マネーによる危機はマネーで解決するしかないのだ。