2月10日 1969年
 
昨夜のショックで、助手の横浜さんと会って話をする。自分の底の浅さを赤裸々に話すが、
普段は厳しい事をいう人が優しいのだ。誰もが持っている底を曝け出したことに理解をしたのだろう。
たまたま会った深井にも話すが彼も同じ反応だ。
この時期に誰もが持っていることでしかないのか。動揺をしているだけだ。それぞれが、
この時期精一杯なのだ。得たことより、得れなかったことに眼がいっているだけだ。
今日池袋駅で見た出来事が印象的であった。階段を手探りをしながら上っていた盲人に女の人が手助けを
しようとするが、拒否をしたのだ。見ていると、誰の手も借りずに歩くことを自分に課しているようだ。
その内面がそのまま出ているようだった。いまの自分に、あの姿が必要である

 

  「強欲資本主義ウォール街の自爆」神谷英樹
                         ー読書日記

投資銀行家として24年間、ウォール街の現場で「アメリカ型資本主義」の有り様を見た批判の書。
内幕暴露モノ的で面白い内容である。 アメリカの金融街、特に巨大投資銀行の貪欲な人たちの、
異常な資本主義の実態を暴いている。 そして米国民の過剰消費という「悲しさ」「欲深さ」を指摘している。
アメリカの金融が収益全体の4割を占めてしまった。 その先頭を走り続けたウォール街の暴走と自爆が、
今回の恐慌を生み出したのである。アメリカの社会と人間の劣化をどう立て直すかを問いかけられたのが金融危機。 
暴走を食い止めるためにルールの根本的修正が必要である。

 ーまずは印象に残った部分を抜粋するー
・「悪いのはアメリカンスタンダード、ウォール街の強欲である」
・「今日の儲けは僕のもの、明日の損は君のもの」 ハイリスク・ハイリターンのビジネスを行い、
 成功報酬はしっかりもらうが、巨額の損失がでたら無関心。
 失敗したら、尻拭いは国民の税金任せというモラルの無いのがウォール街の実態。
・「モノ作り」ができなくなったアメリカが「金融立国」を目指し、成功したかに見えたが、
 行き着いた先は、顧客に目を向けず、数字と戦う強欲な人間たちが金を集めるだけの世界。
 その結果、1929年の大恐慌以来といわれる悪夢が金融界を襲っている。
・「世界一極支配のアメリカ中心世界感」が崩壊し始めた。
・ 市民の消費三昧主義、今借金して楽しんで(消費して)、負債は先延ばしの生き方に走る市民。
・「金融マンは実業を営む方たちの脇役に徹するべき」。
 「主役である実業を営む方たちの事業構築を助けるのが金融本来の仕事のあり方であり、それこそが身分相応。」
 しかしファンド・マネージャーに興味があるのは、『株主の利益』と『自分の収入』だけである。
・トップラインとボトムラインの間にある項目をいかに圧縮するか熱心に取り組むだけである。
 「給料を減らす。社員を減らす。仕入先を泣かす。最大限に借り入れてレバレッジを効かし、
 支払い金利を膨らませ、税金は極力圧縮する。かれらにとっては、これこそが経営の神髄となる」
アメリカをはじめとする先進諸国、そして世界。借金と消費ならず浪費社会、浪費に頼った成長政策。
 「借りた金で今日を愉しむ」「借りた金で投機する」
 「ノンリコースで借りた金は、返せなくなったら担保物権の鍵を渡せば終わり」それを法律で認めてしまった。
・資本主義の行き着いた先が金融市場の国有化とは何たる皮肉であろうか
・日本もアメリカも、経済社会がバブルにまみれ、強欲と拝金に席捲されたときに、人の心から大事なものが
 失われてしまった。 何でもデジタル志向で、「0か1」しかない。その中間が配慮できない。
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 以上が、印象に残ったところである。「『自由も、放任すると、こうなる』という歴史的汚点として、
 ブッシュから遡ってレーガンまでの大統領の各々がたが、残る」と思うと何とも不思議な気持ちになる。
 特にブッシュ親子は歴史上最低の 指導者として数千年も弾劾される。 哀れといえば哀れ。

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