「資本主義は嫌いですか
   ―それでもマネーは世界を動かす 」 竹森 俊平 (著)

この本は私の知人からメールで面白い本があると紹介され、早速買って読んだが面白い!
世界恐慌の様相を示してきているが、米国発の金融システム崩壊の原因は住宅バブルの崩壊によるもの。 
そのバブルが何故起きるかを解りやすく書いてあった。
  ーまずは、その部分からー
なぜ、われわれは、こんなに数多くのバブルを経験するのだろうか。
その結論を要約すれば、「バブルの頻発」は世界経済全体の高い成長率を維持するために、
経済システムの「自動制御装置」が働いた結果であった。 高成長の維持が難しくなる局面に来ると、民間(とくに金融機関)や
政府が、さまざまな手段を動員して高成長の維持を図る。 そのことが繰り返され、結果としてバブルが生まれた。 
あまりにも単純なルールに従って動く「自動制御装置」は、システムの安定をもたらさないこともある。
特定の要因だけを重視して制御する結果、制御されない他の要因によって、かえってシステムの安定が乱される可能性があるからだ。
今回のサブプライム危機も、「自動制御装置」が「高い経済成長率」という一つの要因にあまりに重点を置いてきた結果と
いえるかもしれない。 「サブブライム危機」を契機に、今後は「自動制御装置」も根本的に調整し直されるだろう。
バブルの発生に歯止めをかけるということに重点を置いた調整がなされるのである。
その結果、バブルの頻発もさすがにストップする。その代わり、世界経済の成長率は低下する。これが結論。
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解)これが現在の金融恐慌の原因のバブル発生のあら筋である。 バブルの収縮を繰り返しをしながら、経済は動いていく。
日本の2002年以来の、景気の好調も、著者は、その原因をただせば、「小泉改革」ではなくアメリカの「住宅バブル」という。 
それが崩壊したと言うから、日本は大不況に入ること必定である。 バブル、通貨危機、投機ファンド、市場原理主義、デフレ、
インフレ、など多くの問題が発生する「紙切れ通貨制度」の功罪はあるが、それでも、この管理通貨制度以外に方策は見出せない。
紙幣そのものが、既にバブルそのものである。 そのことは、次回に取り上げる。 
これから最低でも10年は、この通貨制度の危機がつづく。
 著者は「序文」で、シカゴ大学の経済学者フランク・ナイトの
・発生確率が予測できる危険を「リスク」といい、
・そのリスクを予測できない危険を「不確実性」という、
  考え方を取り上げている。
【ナイトは熾烈な市場において、「不確実性」の領域に踏み込むことによってしか、利益を得ることができないと述べている。
なぜなら、事業にかかわる危険が、確率予測できる「リスク」だけなら、事業についての収入と生産費の期待値が計算できるからだ。
そうだとすると、収入の期待値が生産費の期待値を上回り、平均的には「利潤」がその事業に見込まれている場合には、
熾烈な競争が継続するだろうから、その結果、収入の期待値は生産費の期待値まで下がって、平均的には「利潤」消滅せざるをえない。】
という。これ全ての事業にも言えることである。
  著者は序文の中で、
【近年の金融業界の「金融工学」という膨大なデーターによって、確率予測の上で投資戦略を展開してきた。
しかし、考えてみれば、金融業界はあくまでも「リスク」の領域でビジネスを続けてきたはずで、「不確実性」の領域に
大々的に入り込んでいたという主張がおかしいと看破する。 なぜ2007年の夏までは、業界全体が「高利潤」を謳歌できたか。
どこかに欺瞞が潜んでいたと言わざるをえない。 要するに「根本問題」は、「熾烈な競争」「高利潤」「計算のできる危険」という、
同時に成立不可能な三つを、同時に成立させようとした無理な要求そのものにある。「サブプライム危機」とは、その「根本問題」が
生んだ結果に過ぎない。】  まあ、その辺の事情を非常に解りやすく説明している。「根本問題」そのものではない。
しかし、彼らは実は「不確実性」の領域に大々的に踏み込んでいたのである。 「サブプライム」そのものこそ、
「不確実性」そのものである。それを「リスク」と偽り、その「リスク」の領域でのみ経済理論的に認められる
操作を行って、「安全な割りに収益の高い資産」という宣伝文句をつけて売りまくったのである。

以上だが、「高成長を維持するための経済システムの「自動制御装置」が働くが、市場がマイナスに転じなければならない場面でも、
高成長をするために様々な手段を用いて維持を図ろうとする。その結果、システムが偏重をきたし、過剰なバブルになる。
その発生に歯止めをかけようとするが、それがバブルをストップさせるが、世界は低成長になる。」と、
「リスクと不確実性を取り違えてしまった」ことが、要点である。

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