家内は東京大好き人間。 私は好きではないが、少なくとも住みたいとは思わない。
大都会は確かに情報が集まり、面白いかもしれないが、何か豊かさの方向を間違ってしまったように思える。
私は日本の中央の東京の反対側の日本海の都市で、職は新潟市、住いが長岡市である。
のんびりしているが四季の変化が激しく、地方特有の時間がユックリ流れている。 
そこには色いろな人生を、活き活きと生きている人が多い。
また夜になれば、そそくさと家に帰り、家人とノンビリと過ごせる。

私が千葉で事業を始めて二年後、家の事情で実家のある長岡に帰ろうと決意した時のこと、
仕事上で知り合った友人がいった一言「何で、その歳で都落ちをするの?」である。
その人は、やはり私の故郷の近くの出身者である。 Uターンを都落ちという言葉に驚いた。
あの雑踏の、ビルや車だらけの無機物の塊の、何処がよいのか? という見方は地方から見た感想になる。
それぞれの生きてきた過程もあるから一概には±を軽々しくは言えないが。

長男が、半年前に帰省してきて最近勤め始めた。 そして、Uターンの人を評して曰く、
「あの人は○○という会社の落ち武者」 自分を落ち武者と思っているから、いうのだろうが、
落ち武者とはそれなりの仕事を成し遂げた武士だろう?と。  都会礼賛が何処かにあるからだろう。 
確かに、お金と能力があり、長年住み慣れれば、大都会も良いのかもしれない。
学生時代を含めると首都圏に8年居たが、都会だから良いというより、青年期に都会に居たのが良かっただけ。

石原慎太郎がオリンピックを東京へ、とバカみたいなことを言い始めた。
選挙対策上言っているのだろうが、あまり賛同できない。これ以上、東京を酷くするつもりか?である。 
それより誘致されることはないだろうが。

20年近く前に、リクルートの企画で、Uターン、Iターン希望者の集団会場で面接をしたことがあった。 
「もう十数年間、羽田にラッシュアワーの中を通っているが、人間的な営みはゼロ。
とにかく、この無機質の生活から抜け出したい」
「代々木の駅周辺で生まれ育って大学の職員をしているが、この小さな世界から抜け出したい。
この息苦しさは地方の人にはわからないだろう」等々・・・
東京都内と東北六県の人口が同じという。どちらに住みやすいか、ジックリと目をすえれば分かるだろう。
都会にいると、それが分からなくなるのだろう。 といってノンビリし過ぎるのも刺激が無さ過ぎるが。
この歳になり、自分の人生で何が最も恵まれていたのだろうかと、振り返ることが多くなった。
そして結論は、ゆっくり流れている時間と、大らかな自然環境(食べ物も含め)と、情緒豊かな人間である。

海外の旅行先で、ある都会(名古屋)の中年に差し掛かった女性が不思議そうな顔をして
「新潟で、何を楽しみに生きているの?」と言われたことがある。
恐らく、自分の世界以外の想像がつかないのである。

「私などツアーだけで、3千万使い、飲み代は、それ以上。 
近くには何箇所も桜の名所もあるし、毎週末にはな〜 何処かのスナックで遊び呆けている。
自分の創った会社に行けばな〜難しそうな顔をしてな〜、判子を押して帰ってくるし、
子供は二人いてな〜東京で働いているし〜、 痴呆症にかかった母親を5年半もみてな〜、
その母が亡くなった後に何処にもある財産のことでトラブルになってね〜。 小学校、中学校、高校の同級会はな、
年に三度もあってね〜、HPを持っていてな〜、・・・」って言うわけにもいかず、 
逆に「本当に退屈で退屈で、困ったものです」と、同調してしまった。 
 いずくも住めば都ということ! どの世界にも勝手に地獄を作っているのがいるが。

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