2006年06月26日(月)
1910, スペイン画家・堀越千秋−       
    「スペインうやむや日記」−1   読書日記

 先日、図書館で何げなく手にした本が「スペインうやむや日記」 −堀越千秋集英社 であった。
    文章は、10年以上前のものだが、現地に長年住んでなくては書けないことばかり。
    さっそく著者が最近出版したばかりの『スペイン七千夜一夜』ー集英社文庫ーをネットで取り寄せた。
    (まだ読んでないが・・・)

画家のためか、言葉の一言一言が深く胸に突き刺さる。読んでいると飾らない著者の言葉が、
「自分より自分自身の存在が彼のなかにある」というような錯覚になってしまう。
それと、文章の書き方を教わった。 結局は人は自問自答をしているのである。とくに随想日記は独り言で良いはずだ。
著者に、こう言われているようだ。「何を改まってないで、もっと自分に語りかけるように書きなよ!
ブツブツとさ。だいたい頭の中で繰り返している言葉からして何だよ。 そうつまらないよ。言葉を変えなよ。
ヘラヘラしてさ。いいじゃない、それで。アンタなら、そう書いても誰も何とも思わないよ。」

  そこで単純だから、素直に少し文体を変えることにした。直ぐに元に戻ってしまうかどうか、楽しみ。もどるだろう。
  ただ、短文に、簡単な言葉にはなるだろうな〜・・ 「うやむや日記」の =第一章 スペインの黒い雨=から、
  スペインの世界の引き込まれてしまう!まずは、ご覧あれ!これで何も感じなかったら、脳が少し鈍感になっている、
  と思ってもよい?
 ーー 
私は画家である。従って、ものの美醜や、もののうまいまずいなどに通じており、さぞ大酒飲みで貧乏であろう、
と人は皆思うらしいが、そうではない。ARTというものは、ものの美醜の彼方にあり、ましてやもののうまいまずいなどは
とっくの昔に解脱しており、酒はオホホと笑ってたしなむ程度、マットレスのクッションは札束、というのが私の実情。
が、そんなことを吹聴していたのでは、六日間着たままのシャツが「着こなし」に見えなくなってしまうし、
高級料亭にお招ばれされるべきところを「実はおいしいギョーザ屋があるんですよ」となってしまうし、
貧乏な友達にはたかられてしまうであろう。
 
     それでも、長いスペイン暮しで、いやおうなくワインやシェリー酒は飲みつづけているから、
     金曜日だけが安ワインの日、という普通のジャパニーズよりはワインの味は分かるかもしれない。
     だから、たまに日本でのお招ばれでフランス料理なんぞをゴチになったりすると、
     先方がせっかく張り込んでシャブリだのボルドーだのと開けてくれても、
     こっちは値段を知らぬものだから、平気で正直に首を傾げて「うーむ」などと言ってしまう。
     あとできくところによると、そういうものはまあレストランにもよるが
     一万円以上するらしい。そんな高価なものを口に含んで「うーむ」と唸る当方が、さぞかしワイン通に
     みえるのは、東京の金曜日の安ワインファンにはやむをえまい。 でもまずいんだから仕方ないよ。
 
 そもそもフランスのワインなんぞというものが、どういうクワセモノであるかは、先頃
一九九五年のシラク大統領の南太平洋における核実験再開をみても察しがつこうではないか。
いや何も私は、このごろになってそんなことを言っているのじゃない。
シラクがパリ市長だったころから、右翼的で尊大で野心的で人種差別主義者的なこの男の顔が私は大嫌いだった。
この手のツラは、スペインにもちらほら、いやこのごろはぞろぞろいる。 特に一九九二年のバルセロナ・オリンピック以後。
スペインは今(一九九五年)、銀行家や警視総監や政府首脳を含む一大汚職にまみれており、そやつら、
亡国的売国的利己的な連中の顔が、スペインの湿った裏庭パリにもいた。 それがシラクである。
 
    誰だい、芸術の国フランス、なんて言い出したのは。フランスというのは、まず第一に謀略と偽善の国、ですぜ。
    そんなことイギリス人もドイツ人もスペイン人もイタリア人も、そしてフランス人自身だって、よーく知ってる。
    知らないのは、お人好しの日本人だけだ。お忘れかもしれないが、日本は、シラクの南太平洋の核実験再開に
    抗議する国会決議の文中に「許されざる」という文句を入れるとか入れないとか、結局入れないことにして、
    つまり穏便にことを済ませたつもり。これじゃ絶対にフランスになめられるってことが、
    少なくともテレビに出て来た国会議員らの一人も懸念していないところをみると、わかっていないらしい。
    そう、フランス人って、キスもうまいけど、人をなめるのもうまいんだよ。
      ・・・略 
     でも、本当においしい肉を食うとき、あるいはラ・マンチャのチーズだけを肴に夜更けに一人飲むとき、
    心から欲しいのは、スペインの赤ワインだ。銘柄? そんなもん何百もあるけど、どれだっておいしいよ。
    フランス物はもともとまずいからいろいろ言うのよ。町の酒屋にずらり並んだビンの中から、
    まあ五百円以上のものだったら、あなたが東京のレストランで一万五千円も出したフランスの茶渋
    みたいなワインやら、「さっぱりしてる」水っぽいワインなんかとは比較にならぬほど芳醇である。 
    ・・・略
数日後、マドリッドに雨が降った。プラド美術館の前庭に立派な芝が植わっている。
雨のあとそこを通った友人が、芝が全部枯れているよ!と教えてくれた。
数日後、その友人が、枯れた芝はもう除けられて新しいのに替えられたよ、
と教えてくれた。そのあと、また雨が降ったら、また芝が枯れてしまって、また植え替えられた、と。
    古都トレドに住む友人も変なことを言う。雨が降ったら、木の新芽がみな枯れてしまった。
    やがてまた芽は吹いたけれど、そのあとまた雨が降ったらまた枯れてしまった。それを何度か繰り返した、と。
    これはみな、あのチェルノブイリというソ連原子力発電所の事故の影響らしい。

それからしばらく経ったある日、私の住むアパートの下の入り口に、マドリード市役所の名で張り紙があった。
曰く、「これから新夏になります。生野菜は腐りやすいので、なるべく食べないようにしましょう。
またもし食べる時は三分以上洗いましょう」 おかしなことをいうな〜、と思った。
ここは、不幸はあんたの勝手、のスペインなのだ。 その年以降、放射能は生物の間を巡って、
むしろ濃くなっているという説もある。せめて、あの、芝や新芽を枯らした死の灰入りのワインは、私やめておきたい。
    あるとき、しかし、私はよその家に招かれて、うやうやしく空けられ86年物の
    リハオの赤をうっかり飲んでしまった。恐ろしいことに、そのワインは美味かった。

本の雑誌で、ワイン研究家と称する人が86年のボルドーを勧めている記事さえ見た。
もはやヨーロッパでは、チェルノブイリ放射能づけだ。
近所の人の多くはガンだ。日本に帰ってくると、沢山の知人がガンだ。なぜだ?
               (*^ワ^*)i バイ
・・・・・・・